条例違反の条例によってなされる沖縄の県民の投票
沖縄県で2月24日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事の是非を問う県民投票が行われる。普天間飛行場がある宜野湾市をはじめとする自治体が不参加を表明した自治体に、立憲民主党の枝野代表が「(市長の)リコールと損害賠償請求訴訟の提起という二つがある」などと発言、不当な圧力をかけている。
県民投票は投票の選択肢を3つ用意する方向で動き出したが、これらの自治体はいったんは民主主義の手続きに基づいて不参加を決めた。これに対し「訴訟」を持ち出すなど、とても政治家とは思えない発言だ。もはや単なるアジテーターというほかはない。
民主主義のルールと言えば、今回の県民投票は果たして、民主的、中立的に行われているのだろうか。
今回の県民投票は条例に基づいて行われるが、その条例の第11条では「知事は、県民が賛否を判断するために必要な広報活動を行うとともに、情報の提供に努めなければならない」と、第2項で「前項の広報活動及び情報提供は、客観的かつ中立的に行うものとする」と規定している。
この条文を読めば、沖縄県は、知事も含め、県民投票に絡んで行う広報活動、情報提供は「客観的かつ中立的」でなければならないことが分かるだろう。
しかし、そもそもこの条例の名称は「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民条例」となっている。辺野古に建設するのは新たな基地ではなく、普天間飛行場の移設施設だ。さも、新しい基地ができるようなイメージを与える条例の名称からして「客観的かつ中立的」ではない。
ちなみにこの事業の国の名称は「普天間飛行場代替施設建設事業」だ。では、メディアがどう表現しているかと言うと、朝日は一般の記事では「米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事」などのように「移設工事」が多く、社説では「新しい基地」「基地」などという表記がされている。
読売は「米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画を巡り」というように、飛行場の移設工事という表現をしている。毎日は社説でも「米軍普天間飛行場の辺野古移設」などと表記している。
これに対し「新基地」という表記にこだわっているのが、沖縄タイムスと琉球新報の地元新聞だ。「沖縄県名護市辺野古の新基地建設の賛否を問う県民投票」(沖縄タイムス)というように、そこには「普天間基地の移設」という言葉も見当たらない。
沖縄の地元新聞だけが「新基地」という表記を続けているが、全国メディアは、朝日新聞でさえも「米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事」と表記しているのだ。
そうした状況の中で、県民投票の根拠となる条例の名称が「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民条例」となっていることは、その時点ですでに「客観的かつ中立的」という情報提供の規定から逸脱しているというしかない。条例の名称からして条例違反だ。
正しい情報に接することができないまま、枝野氏のようなアジテーターが発信する情報を信じてしまえば、沖縄県の民主主義は根本から崩れるのだろう。