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2021.01.22

【特集】悪化か改善か? 転機に立つ日韓関係

日韓関係が、悪化するか、改善に向かうか、その転機に立っている。旧朝鮮半島出身労働者、いわゆる元徴用工訴訟問題に加え、いわゆる元徴用工訴訟問題も新たに加わったが、反日姿勢を鮮明に示していた韓国の文在寅大統領がここへきて日韓関係改善の意志を表明した。しかし、問われるのは意志ではなく具体的な行動だ。韓国が行動し、日韓間に横たわる韓国の〝違法状態〟を是正しなければ、日本政府や日本企業の資産の差し押さえや現金化などが現実のものとなり、両国の関係は一気に緊張が高まるだろう。

 

▽文大統領の意外な発言

 

「強制執行方式で(日本企業の資産が)現金化されたり、判決が実行される方式は、日韓両国の関係に望ましくない」。

文大統領は18日の年頭の記者会見で、元徴用工訴訟問題について、こう述べた。徴用工訴訟では、すでに損害賠償を命じられた日本企業の資産が差し押さえられており、売却による現金化をけん制した形だ。

 

また、文大統領は元慰安婦訴訟でも、日本政府に損害賠償を命じた判決について「正直、少し困惑しているのが事実」と述べ、これまでのあからさまな日本批判を回避した。

この判決は、日本政府に対し原告1人当たりに1億ウォン(約950万円)の支払いを命じたものだ。

 

文大統領はこれまで、元徴用工訴訟の判決について「判決を尊重する」という立場を貫いてきたが、今回の年頭記者会見での「現金化は好ましくない」「困惑している」という言葉を鵜呑みにすれば、これまでの姿勢が変化したと解釈できるだろう。

 

さらに文大統領は会見で「韓国政府は、2015年の慰安婦合意が両国政府間公式合意だったという事実を認める」とも述べている。2015年の合意と言うのは言うまでもなく日韓両国が慰安婦合意で、「最終的かつ不可逆的な解決を確認」したものだ。

この合意によって日本政府は、韓国政府が設立する元慰安婦を支援するための「和解・癒やし財団」に10億円拠出することを約束し、実際2016年8月31日に履行している。

 

しかし、韓国側は2019年7月に一方的にこの財団を解散させ、事実上の合意破棄とも言える状況に置いていた。

文大統領が慰安婦合意について政府間の公式合意であることを直接言及したのは今回が初めてで、それも文大統領の対日方針の変更と考えられている。

 

▽韓国〝格下げ〟で「重要な隣国」

 

「韓国は重要な隣国。現在、両国の関係は非常に厳しい状況にある。健全な関係に戻すためにも、我が国の一貫した立場に基づき、韓国側に適切な対応を強く求めていく」。

菅首相は18日に召集された通常国会の施政方針演説で、韓国について「重要な隣国」と述べた。

 

これに対し、1年前の2020年1月20日に召集された通常国会の施政方針演説では、当時の安倍首相が「韓国は、元来、基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国。であればこそ、国と国との約束を守り、未来志向の両国関係を築き上げることを、切に期待する」と述べている。

 

この一年間で「最も重要な隣国」から「重要な隣国」へと〝格下げ〟となったのは、徴用工訴訟で何も対応しなかったばかりか、通常国会召集の直前に飛び込む形となった慰安婦訴訟判決へ日本としての厳しい姿勢を伝えるためだ。

 

その日本の姿勢をさらに強い調子で示したのが今国会での茂木外相の外交演説だ。少し長くなるが紹介すると「最近の日韓関係は、旧朝鮮半島出身労働者問題や慰安婦問題などにより更に厳しい状況に陥っている。特に、今般の元慰安婦等による対日訴訟判決については、国際法上も、二国間関係上も、到底考えられない、異常な事態が発生したと極めて遺憾にとらえている。私から康京和韓国外交部長官に電話をし、強く抗議するとともに、韓国が国家として国際法違反を是正するための措置を早急に講じることを強く求めた。政府として、両国間の問題に関する日本の一貫した立場に基づき、今後とも韓国側に適切な対応を強く求めていく。また、竹島は、歴史的事実に照らしても、かつ、国際法上も日本固有の領土であり、この基本的な立場に基づき、冷静に、かつ、毅然と対応する」としており、韓国側に是正措置を取るよう強く求めている。

▽理があるのは日本

 

元徴用工、元慰安婦による一連の訴訟については、日本に理があるのは明白だ。そもそも日本と韓国は1965年の日韓請求権協定で、互いの請求権について解決済みとなっている。

 

日韓請求権協定では、第2条で「両締約国は、(中略)請求権に関する問題が、1951年9月8日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第4条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」と規定。

 

その上で「一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であつてこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であつて同日以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もすることができないものとする」と明記している。

 

これは、韓国政府が日本政府に対して何らかの請求をすることはもちろん、韓国国民が日本政府や日本国民(個人や企業)に対して何らかの請求をすることはできないということだ。だから、元徴用工が日本企業に、元慰安婦が日本政府に対して損害賠償を求めることはできない。

 

さらに慰安婦訴訟では、他国の裁判権に国家は服さないという国際法上の「主権免除」の原則がある。これは国際法で決まっている原則であり、日本政府は、この主権免除の原則にのっとり裁判には出席していない。

韓国の地裁は「韓国憲法27条1項、国連人権宣言などでも(被害者が)裁判を受ける権利を宣言している」「反人権的行為に対し国家免除(主権免除)を適用したら請求権がはく奪され、被害者は救済を受けられない」と主権免除の適用しなかったのだが、韓国内でも、仮に今回の判決が国際司法裁判所(ICJ)に付された場合、「日本が勝訴する可能性が高い」と判断する専門家の見方が伝えられている。

 

そして言うまでもなく、慰安婦問題では2015年の慰安婦合意があり、韓国政府はこれを一方的に骨抜きしたのだ。

 

以上のような状況をみれば、元徴用工訴訟問題も、元慰安婦訴訟問題も韓国側が一方的に国際法や国家間の合意を踏みにじり、日本企業の資産や日本国民の資産である日本政府資産を差し押さえることに道を開いたのだ。

これが認められ、仮に資産の現金化が行われて損害賠償に充てられるようなことがあれば、日本の国益が損なわれると同時に、日韓関係がこれまでにない緊張状態になることは間違いない。

 

▽対日姿勢の変化? リップサービス?

 

 

日韓関係が今後、どういう道筋をたどるか、文大統領の方針転換が実のあるものなのか、単なるリップサービスに終わるのかにかかっているだろう。

その一つのヒントになるのが記者会見での文大統領の発言だ。

 

文大統領は元徴用工訴訟について「両国間の外交的解決策を見つけることが優先」「原告らが同意できる方法を両国政府が会議し、韓国が最大限説得する。こうした方法で問題を着々と解決していけると信じている」と述べている。

 

この発言の中で注目すべきなのは、原告である元徴用工の原告が同意する解決策を「日韓両国」で検討するとしているのだ。そして自ら解決のための具体的措置を言及することはなかった。ましてや、この問題を解決するために日本側が何らかの措置を取る必然性はまったくない。

 

茂木外相も文発言について「残念ながらここ数年、韓国によって国際約束が破られ、また、二国間合意が実施されていない状況があります。こうした現状では、問題を解決したいという韓国側の姿勢の表明だけで評価を行うことは難しい」と述べているが、これまで真摯に対応していなかった韓国側の姿勢を、この発言だけで信頼することは極めて困難だ。

 

菅首相は、慰安婦訴訟の判決が出た直後に「日韓の慰安婦問題については、1965年の日韓請求権協定において、完全かつ最終的に解決済みである。だから、韓国政府として国際法上違反を是正する、そうした措置を採ることを強く求めたいと思う。我が国としては、このような判決が出されることは、断じて受け入れることはできない」と強い調子で語っているが、全ては韓国側の責任で解決するべきであることは明白だ。

 

文大統領の記者会見での発言がリップサービスなのか、それとも実際に対日姿勢の変化を示したものなのかは現在のところ不明だ。韓国側自ら解決しない限り、日本の国益が侵される可能性がある。日韓両国が未来志向の関係を築けるのか、それともさらに関係が悪化するのか、その転換点に立っていることは間違いない。

(terracePRESS編集部)

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