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2020.09.04

【特集】安倍首相辞任表明を新聞はどう伝えたか

安倍首相は8月28日の記者会見で辞任することを表明した。健康上の理由による突然の辞任表明で、国民はもちろんメディアも驚きをもって安倍首相の説明に耳を傾けた。当然のことながら翌29日付け朝刊各紙の紙面は、首相の辞任表明関連の記事で多くのページが埋められた。しかし、7年8カ月におよび国民が信任し続けた首相にも関わらず、朝日新聞をはじめとする一部の新聞は首相の功績には目をつぶり、国民に正しい情報は提供しないという〝偏向報道〟で終始した。各紙がどう伝えたか検証する。

 

▽国民を衆愚と考える朝日新聞

 

安倍首相は会見で「政治においては、最も重要なことは結果を出すことである。私は、政権発足以来、そう申し上げ、この7年8か月、結果を出すために全身全霊を傾けてまいりました。病気と治療を抱え、体力が万全でないという苦痛の中、大切な政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはなりません。国民の皆様の負託に自信を持って応えられる状態でなくなった以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではないと判断いたしました。総理大臣の職を辞することといたします」と述べた。「結果を出すために全身全霊を傾けてきた」という首相。しかし、その事実と首相の思いは一部のメディアには伝わらない。

 

首相の辞任表明について各紙は29日付け朝刊の1面トップで一様に「安倍首相辞任表明 持病再発」といった見出しで、辞任表明記者会見の内容を伝えた。

この1面トップ記事は「本記」と呼ばれるもので、いつ、どこで、何が起こったかを伝えなければならないから、見出し自体は各社ともほとんど変わらない。

 

「本記」は5W1Hを中心に構成されるため、29日付け朝刊の1面トップ記事も安倍首相の会見発言を中心とする構成となり、その新聞のカラーは比較的出にくい。

だから、その新聞が読者に何を伝えようとしているのかは、「解説」「評論」「社説」や、その他の「サイド記事」に表れることになる。

 

朝日新聞は1面左肩に政治部長の論評を掲載しているが、見出しは「1強政治の『負の遺産』教訓に」としており、安倍政権について「この最長政権が政治のあるべき姿という点で『負の遺産』を残したのは確かだ。国民の疑問にきちんと向き合ってきたのかを冷静に問い直さなければならない」と断じている。まさに、安倍政権が悪政を繰り返し、国民を不幸にしたかのような印象を与えている。

 

記事は、政府の人事権を首相官邸が握り、官僚が過剰に忖度し、国会も軽視。国会質疑では説明をしようともせず、森友・加計学園問題や桜を見る会では、首相や閣僚は政治責任も取らないなどと朝日新聞の〝評価〟を一方的に述べるだけで、アベノミクスによる景気拡大で雇用の拡大を果たしたことや、幼保無償化の実現など国民に直接恩恵があった実績は完全無視だ。

 

▽ネガティブイメージ作りの紙面

驚くべきなのは、経済面に掲載している「安倍政権での経済指標の変化」と題し、首相就任時と現在の実質GDPや潜在成長率、失業率などを比較した表だ。

この表の冒頭にある実質GDPは就任時の2012年10~12月期の498兆円に対して、現在は2020年4~6月期の485兆円を示している。就任時に比べると現在の方が縮小しており、これでは首相が就任してから現在までほとんど成長していないような印象を与える。

 

もちろん、この4~6月期の数字は正しいのだが、新型コロナウイルス感染症と言う未曽有の危機に直面し、緊急事態宣言まで発出した期間のGDPをそのまま使っているのだ。もちろん、この期間の経済は各国とも大幅に減少しており、日本だけが大幅に落ち込んだわけではない。

 

安倍政権になってからのGDPは、就任時の2012年10~12月期後の13年1~3月期から500兆円台に乗り、それ以降、わずかな増減はあるものの右肩上がり傾向で成長していた。事実、表で示されている2020年4~6月期の前期となる2020年1~3月期は526兆円となっている。この事実について記事中で触れるならまだしも、一言も解説していないのだ。

朝日新聞は、新型コロナの影響でイレギュラーな落ち込みとなった20年4~6月期の数字を使うことで、安倍政権で経済政策に失敗したかのようなイメージを作りたかったのだろうか。

 

また、社説も同様だ。「最長政権 突然の幕へ 『安倍政治』の弊害 清算の時」と題し、冒頭では「この間、深く傷つけられた日本の民主主義を立て直す一歩としなければならない」と触れ、末尾では今回の総裁選に触れ「最大派閥出身の首相の影響力に遠慮して、安倍政権の功罪がしっかり検証されず、政策論争そっちのけで、数合わせに走るようなことがあってはならない。国民の信頼を取り戻せるか、自民党にとってまさに正念場である」と結んでいる。

 

朝日新聞はとことん安倍首相が嫌いなのだろう。1面の政治部長の論評は「負の遺産」、社説は「弊害」だ。戦後最長にはならなかったが、長期間に及ぶ景気の拡大期を実現させたことや、国民の支持を得て国政選挙で6連勝をしたにも関わらず、何が何でも安倍政権を悪政と位置付けたいのだ。朝日新聞には、そんな政権を支持した国民は〝衆愚〟と映っているに違いない。

 

 

▽毎日新聞の驚くべき社説

 

毎日新聞で目を疑いたくなるのが社説だ。もちろん、首相の辞任表明をテーマにしているのだが、その見出しは「安倍首相が辞任表明 行き詰った末の幕引き」だ。記事の冒頭で「安倍晋三首相が体調悪化を理由に辞任を表明した。新型コロナウイルス感染症対策が後手に回り、政権運営が行き詰まる中での突然の幕引きだ」と述べている。

これではまるで、政権運営に追い詰められた安倍首相が病気を理由にして政権を放り出したかのようではないか。

確かに記事中でも「持病である潰瘍性大腸炎が再発する兆候が6月に見つかり、今月の検査で再発が確認されたという」と述べているが、この見出しからは健康上の問題で辞任表明したとは思えない。

 

さらに、「新型コロナウイルス感染症対策が後手に回り」としている点についても、後手に回った例として挙げているのが、マスクの配布や10万円の給付であり、決して新型コロナ対策の全体像ではない。補正予算の策定や経済対策の策定などをみれば、決して後手に回っていないにも関わらずだ。

しかし、それでも社説は新型コロナ対策で後手に回ったとし、その上で「政権運営が行き詰まる中での突然の幕引き」と断じているのだ。それも、政権運営がどのように行き詰まっているのか、一言も触れないままにだ。

 

社説はさらに「2007年の第一次政権の時と同様、任期途中での突然の辞任で混乱を生んだことは残念だ」とも述べている。「コロナ対応という危機管理が求められる状況であり、首相の判断はやむを得ない」とも書いてはいるが、「突然の辞任表明が混乱を生んだ」などというのは、一方的で偏った見方しかできない者が書いたとしか思えない。

 

首相は会見で辞任表明の理由について「病気と治療を抱え、体力が万全でないという苦痛の中、大切な政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはならない」と述べているわけで、首相としての職責を果たせないという自身の判断なのだ。

首相の責務はコロナだけではない。国民が安心して暮らせる社会を構築することはもちろんのこと、大災害はいつ発生するか分からないし、アジア情勢など緊張が増している。

そうした緊張が強いられる中で、首相は一つ一つ政治判断をしなければならない。だからこそ、首相は政治判断を誤ってはいけないと断腸の思いで辞任を表明したのだ。辞任の表明は、その決断は納得できるものではあっても、批判されることではない。それを「混乱を生んだ」などと批判する毎日新聞は、首相が政治判断を間違えてもいいとでも軽く考えているのだろう。恐ろしくお粗末な社説だ。

 

▽軽々しく「分断」と断ずる東京新聞

 

東京新聞は1面で「安倍首相 退陣」との大見出しとともに「1強と分断の7年8カ月」との縦見出しを掲げた。

1面に掲載した政治部長の署名記事では「(安倍首相の)その手法は、首相の路線を支持する人たちと、納得できない人たちとの間で、社会的な分断を生んだ。社会の分断がこのままでいいはずがない」などと指摘している。しかし、「分断」という抽象的な言葉を使っているだけで、それが具体的にどのような状況なのかは説明していない。例示らしきものというと「世論に反して安保法や特定秘密保護法などを次々に成立させた」とあるが、これらは国論を二分する課題にも果敢に挑んだということでもある。

 

今回紹介した各紙の紙面を点検していくとキリがないが、各紙に共通するのは、あたかも日本が非民主主義国家で、7年8カ月の独裁政権が行われていたかのように錯覚していることだ。否、意識的に錯覚して、読者を誘導しようとしているのだ。

安倍政権は民主的手続きによって選挙の結果により誕生し、安倍首相は民主的手続きにより首班に指名されているのだ。

しかし、ここで紹介した各紙は、そんなことはお構いなしで、自分たちの意にそぐわない政権については、どんなに成果を上げようと、徹頭徹尾、批判すればいいという姿勢なのだろう。

 

(terracePRESS編集部)

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