憲法改正議論を進めるのが政治の務め
菅首相が安倍前首相から継承したものは、いわゆるアベノミクスと言われる経済政策だけではない。憲法改正も重要な継承テーマだ。もちろん憲法改正は政府が行うものではなく、国会、それを構成する各党の役割ということになる。菅首相も、自民党総裁として安倍前総裁から憲法改正を引き継いだわけだ。菅政権下で即座に憲法改正が行われるということにはならないが、国会が憲法改正に向けた議論を進めることは国民の要請でもある。
菅政権発足後、憲法改正論議もスタートしている。自民党は10月8日、憲法改正推進本部の役員会を開き、党の改憲案を策定する「憲法改正原案起草委員会」を設置することを決めている。憲法改正推進本部長に就任した衛藤征士郎氏は「目標としては、年末までに憲法改正原案を策定して憲法審査会に届けたい」と述べており、すでに自民党が掲げている4項目の改憲「イメージ案」について具体的な条文案を作成する見込みだ。
自民党の4項目は ①自衛隊の明記 ②緊急事態対応 ③参院「合区」の解消 ④教育無償化-で、自衛隊の明記については、自衛隊をきちんと憲法に位置づけることで、「自衛隊違憲論」の解消を目指すものだ。そのため現行の9条1項、2項とその解釈を維持しながら、自衛隊を明記する方向が検討されている。
また、緊急事態条項は首都圏直下型地震や南海トラフ地震などの大災害が発生したような緊急事態でも国会の機能をできるだけ維持し、それが難しい場合に、内閣の権限を一時的に強化し、迅速に対応できるしくみを憲法に規定することが考えられている。
これらを具体的な条文にするのが「憲法改正原案起草委員会」ということになる。
一方、国民民主党も9日、憲法調査会(山尾志桜里会長)の初会合を開き、年内に独自の改憲草案をまとめる方針を決めている。玉木代表は会合で「憲法議論となると、どうしてもイデオロギー対立になったり、特定の条文に関心が集まったりして、本来の国民のための憲法という議論ができていなかったのではないか」と指摘、「憲法議論の中身、プロセスで、新しいアプローチ、新しい答えを示したい」と述べている。
自民、国民民主が憲法論議を進める中で、立憲民主党は議論さえ進めようとしていない。
枝野代表は記者会見で「立憲主義を強化する、つまり権力をより縛る、国民、有権者の視点からという方向の議論は積極的にやるべきだ。その縛りを緩める方向の議論はあり得ない。その姿勢、どういう方向でどういうやり方をしようとしているのか、やり方も政権を競い合う土俵作りだ。まずは向こう(自民党)の出方を見たい」と述べている。
政権を競い合うなら、堂々と憲法改正を議論するのが政党の責務だが、どうやら立憲民主はそうした国民の要請には応えないようだ。
憲法が施行されてから73年が経過した。この間、日本の社会や国民の生活、日本を取り巻く環境は大きく変わっている。しかし、憲法だけは一度も改正されておらず、それでも時代に合致していると考える人はどれだけいるのだろう。新しい社会の構築が求められている中で、まずは改正に向けた議論を早急に深めるべきだろう。
(terracePRESS編集部)