海洋放出の風評被害対策に全力を
東日本大震災で壊滅的被害を受けた東京電力福島第一原発の処理水の処分について、政府は13日の関係閣僚会議で、2年後をめどに海洋放出を実施する方針を決定した。海洋放出するのは安全性を確保したもので、すでに世界中の多くの原子力施設で行われている。しかし、海洋放出については情報発信不足や誤解などに基づく風評被害が起こることも予想され、福島のためにも安全性などを徹底して広報していくことが不可欠だ。
関係閣僚会議で菅首相は「処分は廃炉を進めるのに避けては通れない課題だ。政府が前面に立って安全性を確保し、風評払拭に向けあらゆる対策を行う」と強調している。
そもそも汚染水とは地下水が原子炉建屋内に流れ込み、燃料デブリなどに触れることで発生する水のことで、高濃度の放射性物質を含んでいる。
第一原発では、この汚染水の放射性物質を多核種除去設備(ALPS)で浄化し、原発敷地内のタンクに貯蔵している。
3月18日現在で、この処理水は、処理途中のストロンチウム処理水も合わせ約125万立方メートルに達している。
政府は、汚染水に関する「規制基準」を①タンクにおいて貯蔵する際の基準 ②環境へ処分する際の基準―の2つを定めているが、現在②の「環境へ処分する際の基準」を満たしているものは2割程度しかないため、今後、海洋放出に備え、処理の促進が必要となる。
ALPSで処理した水は、汚染水から放射性物質の大部分を取り除いたものになるが、水素の仲間であるトリチウムという放射性物質は残るが、水道水や食べ物などに普段から存在するもので、これも規制基準を満たして処分すれば、環境や人体への影響はないと考えられている。
実際、希釈したトリチウムの海洋放出は英国、フランス、スペイン、韓国、米国、カナダなど世界31の国・地域の原子力施設で行われており、安全性については世界共通の認識となっている。
しかし、韓国などでは海洋放出について懸念も出ており、韓国政府は13日、「周辺国の安全と海洋環境に危険を招くだけでなく、最も隣接したわが国と十分な協議なしに行った一方的な措置。絶対に容認できない」と強硬に反発した。
汚染水は、安全性が問題ない基準にまでALPSで確実に処理され、それが海洋に放出される。環境や人体への影響はないと考えるのが国際的な認識なのだが、海洋放出により風評、根拠なき噂が国内外に広まれば、福島の漁業関係者のみならず、国際的な日本への信頼も揺らぐことになる。
実際に放出されるのは2年後だが、この2年間は徹底した広報を行い、誤解や理解不足が生じないようにすることが極めて重要になる。
(terracePRESS編集部)