科学技術の開発促進する「新しい資本主義」
岸田首相の提唱する「新しい資本主義」の実現に向けて科学技術開発の促進が求められている。科学技術は、日本が今後成長するための前提であり、官民の総力を挙げた取り組みが不可欠だ。日本の将来を見据え、創造的な研究を生み出す社会を作れるかどうかが問われている。
先ごろ開かれた第4回新しい資本主義実現会議では、科学技術について議論を深めている。
各国の官民合わせた研究開発投資額をみると、2000年から2019年にかけて、米国は1.70倍、ドイツは1.67倍、英国が1.49倍、フランスが1.34倍に上昇しているのに対して、日本は1.29倍にとどまっている。
また、研究論文が引用された回数をみると、1997-1999年平均で日本は米国、英国、ドイツに続いて4位だったが、2007-2009年平均では5位に、2017-2019年平均になると10位にまで低下している。
これだけをみても、日本の科学技術の国際的な地盤沈下は目を覆うべきものがある。
会議では「研究開発による社会全体の収益率は開発企業自身の私的な収益率よりも2.5倍以上大きいとの研究もある。こうした研究開発の投資の外部性は市場任せでは解決しない。官民連携による研究開発投資の実施によって社会的な投資効果を最大化することが重要ではないか」、「初期の失敗を許容し、長期に成果をきちんと求める研究開発助成制度は、研究成果を短期に求め続ける助成制度より、インパクトの高い成果を生むとの実証研究がある。近視眼ではなく長期の視点で創造性を高めるインセンティブ設計が重要ではないか」といった多数の論点が提示されている。
現在、日本がリードすべき技術は「量子技術」「AI(人工知能)」「再生・細胞医療・遺伝子治療」「バイオものづくり」「クリーンエネルギー」などと考えられているが、今後具体的な方策の検討を深める見込みだ。
例えば、先端基盤技術(量子・AI)は、この基盤技術の開発から実装まで日本の企業が競争力をいかに確保できるかは、その産業の競争力だけでなく、幅広い応用が行われるため、日本経済全体の競争力に関わる課題で、どのような〝勝てる〟戦略を構築するかが重要だ。
岸田首相は会議で「科学技術は、社会的価値を追求する手段として、新しい資本主義実現の重要な柱。近年の我が国は、個々の研究分野の間に垣根があり、研究内容も近視眼になりやすく、若い研究者の潜在能力をいかし切れていない、企業による具体的ニーズを念頭に置いていない、といった問題点が指摘されている」「潜在能力の高い若い研究者の卵の皆さんに対して、将来につなげるチャンスを提供することを、国を挙げて考えていく」などと述べている。
科学技術を含め「新しい資本主義」社会を構築することが、持続的に日本を発展させることにつながるだろう。
(terracePRESS編集部)