賃上げに真正面から取り組む岸田政権
政府は先ごろ、「新しい資本主義実現会議」を開き、10月末に策定する総合経済対策に盛り込む重点事項を取りまとめた。このうち注目されるのが当面の「物価上昇分をカバーする賃上げ」だ。その一方で人への投資を拡大、スタートアップ企業の育成を加速させたりして日本経済の成長を実現する考えだ。
会議では総合経済対策に盛り込む重点項目として①人への投資と分配(労働移動円滑化、リスキリング、構造的な賃金引上げ)②スタートアップの起業加速及びオープンイノベーションの推進③科学技術・イノベーションへの投資④資産所得の倍増⑤経済社会の多極集中化⑥GX及びDXへの投資⑦社会的課題を解決する経済社会システムの構築⑧経済安全保障・サプライチェーン強靭化・個別分野の取組、といった8項目を掲げている。
この中で賃上げについては「来春の賃金交渉においては、物価上昇をカバーする賃上げを目標にして、価格転嫁や生産性向上策の強化や補助制度の拡充を図るとともに、非正規労働者の賃金改善のため、同一労働同一賃金制の遵守を徹底する」などとしている。
賃上げについて首相は同会議で「短期的な賃金引上げに向けては、政府としては、来春の賃金交渉において、物価上昇をカバーする賃上げを目標にして、個々の企業の実情に応じて労使で議論いただきたい」などと指摘。
また、臨時国会での所信表明演説でも「なぜ日本では、長年にわたり、大きな賃上げが実現しないのか。そこには、賃上げが、高いスキルの人材を惹(ひ)きつけ、企業の生産性を向上させ、更なる賃上げを生むという好循環が、機能していないという、構造的な問題がある。一たび、このサイクルが動き出せば、人への投資が更に進み、この好循環は加速していく。そのため、賃上げと、労働移動の円滑化、人への投資という三つの課題の一体的改革を進める。物価高が進み、賃上げが喫緊の課題となっている今こそ、正面から、果断に、この積年の大問題に挑み、『構造的な賃上げ』の実現を目指す」と述べている。
もちろん、構造的な賃上げが必要なことは間違いないが、この「新しい資本主義実現会議」でも議論になったように、まずは物価上昇に見合う賃上げの実現だろう。
そのため、物価上昇に見合う労使の賃上げ協議を政府が後押しするほか、中小企業の賃上げが可能となる取引環境を整備するため、労務費・原材料価格・エネルギーコストなどのコスト上昇分を取引価格に下請企業が転嫁できるような仕組みを構築したり、公正取引委員会の執行体制を強化するという。
また、非正規雇用労働者の待遇の改善を図るため、正規と非正規との不合理な待遇差を禁止する同一労働同一賃金の施行を強化したり、フリーランスの方が報酬の支払い遅延などでトラブルに直面しないよう、取引適正化のための法案を今国会に提出するという。
賃上げが円滑に実施されることが、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」での人への投資の実現にもつながる。
岸田政権は賃上げに真正面から取り組む考えで、それが国民生活の安定を生むことになる。
(terracePRESS編集部)