私権を守るためにも早急な特措法が必要
新型コロナウイルス対策の一環として、政府は特別措置法を制定する方針だ。具体的には、民主党政権だった2012年4月27日に成立、5月11日に施行された新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象に新型コロナを加えるものだ。
現行法では政府が緊急事態宣言を行うことができ、宣言をすると①住民への外出自粛要請②学校、保健所、老人福祉施設などの使用停止の要請、指示③音楽、スポーツイベントなどの開催制限の要請、指示④臨時医療施設のための土地、建物の使用(強制使用も含む)-などができることになっている。
日本は民主国家であり、行政は法律に基づいて進められなければならない。今回の学校の臨時休校は、政府に法的権限がないため、あくまでも政府の「要請」であり、個々の判断は学校設置者が行っている。
音楽やスポーツイベントなども、それぞれの主催者が独自に開催や中止の判断をしている。それはとても苦しい判断もあるだろう。それでも個々の主催者が独自に判断しているものなのだ。
しかし、独自の判断と言っても、政府が要請したのだから、結果としてその要請に応える形で行っているのが実態。しかし、その政府の「要請」には法的根拠がなかったり薄弱だったりするのだ。
今回の特措法改正をめぐり早くも「私権制限」を懸念する声が出ているが、デュープロセス、いわゆる「適法手続き」ということを考えれば、法律に基づかない〝要請〟の方が、よほど民主的ではないし、私権を危うくするものだ。極論を言えば、法律に基づかないで私権を制限しているとも言えるのだ。もちろん、それは法治国家として緊急避難的なもので容認されるべきことだ。
しかし本来は、私権をたとえ一部でも制限するにせよ、そこには法的な根拠が不可欠だ。
それが民主国家や法治国家のあり方で、私権を守るためにこそ、法的な根拠が必要となる。
ちなみに、現行法の第5条では、「基本的人権の尊重」を謳い、条文で「国民の自由と権利が尊重されるべきことに鑑み、新型インフルエンザ等対策を実施する場合において、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該新型インフルエンザ等対策を実施するため必要最小限のものでなければならない」と定めている。
新型コロナウイルスについては不要な誤解や噂が飛び交っている。特別措置法に関しても「私権を制限する法律」「民主主義が破壊される」といった誤解や嘘がまん延すれば、それは日本にとってマイナスでしかない。
(terracePRESS編集部)