危機感が乏しいテレビ、キャスターは害悪
新聞、テレビなどメディアは通常、編集や報道の指針で「公平中立」を掲げている。意見が異なることに対して両者の主張を取り上げ、自社のスタンスとして公平であり、中立であることを確保しているわけだ。
実際は、多くのメディアが政府に対して一方的な批判をしているケースがあり、「公平中立の報道を実施している」というより、「公平中立を装っている」というのが実態だ。
新型コロナウイルス感染症については当然ながら、テレビ局もニュース番組、いわゆる情報番組まで各番組で連日、報道しているが、それらの番組に出るキャスターやコメンテーターから出る言葉は、害悪でしかない。
例えば、小池都知事が25日夜、都庁で緊急記者会見を開き、週末に不要不急の外出を避けるよう要請したが、それを報じた情報番組のキャスターやコメンテーターは、ひたすら意味のないコメントを口にするだけだった。
25日のテレビ朝日「報道ステーション」では、コメンテーターの後藤謙次氏が「小池さんのこれまでの発信力がやや弱かったのではないか。北海道知事、和歌山県知事は果敢に立ち向かっていた。今回の記者会見も私は一手遅れの印象」と指摘。また、小池氏が首都圏の一都六県のテレビ会議を提案したことに「遅きに失した感じがするんです」と述べている。
「発信力が弱かった」「遅きに失した」という後藤氏は、とにかく批判すればよいという単純な思考しかないのかもしれない。
フジテレビの26日の「とくダネ」では、小倉智昭氏が「ニューヨークやロンドンやパリに住んでいる人が東京の(花見客などの)ニュースを見て“東京はなんでこんなに人がいっぱい歩いているの?”って驚いたりするんですけど、これって法律の縛りの弱さ、法律が多分に関係してくるんですかね」と他人事のように話す始末だ。
さらに小倉氏は27日の「とくダネ」で「私も小さな店をやっているが、週末に宴会の予約が入っている。お客さんの方がキャンセルしないなら、お店はやるしかない、ということになったんですよね」と、週末の外出の自粛要請を呼びかけるために生出演した小池知事の面前で言い放っている。
耳をふさぎたくなるひどさは俳優の坂上忍氏だ。27日のフジテレビ「バイキング」で、放った言葉が「都民の方がとまどっているのが、不要不急ってどこで線を引けばいいんですかって皆さん思っている」だ。一般の人々の気持ちを代弁したつもりだろうが、都民を馬鹿にした上に、何も意味のないコメントだ。
キャスターやコメンテーターの口から相次いで政府や自治体の対応批判のコメントが出るのは、新型コロナウイルス感染症の危機感の乏しさや、権力批判すればいっぱしのコメントになる勘違いしているからだろう。同じテレビで、イタリアやスペイン、イギリス、米国などの状況が伝えられているのに、日本でもそんな危機的状況になる可能性があるということすら理解できないのだ。
東日本大震災時、またそれ以降に発生した地震の際、住民を津波被害から守るために、テレビでは「海から離れてください」「海に近づかないでください」「津波に気をつけてください」などと呼びかけることが定着している。
人の命を守るという点では、津波も新型コロナウイルスも同じはずだ。それにもかかわらずテレビによる「週末は外出を自粛してください」といった積極的な呼びかけは、ほとんど聞こえてこなかった。それもこれも、テレビ局の新型コロナウイルスの危険性への感度の悪さのためで、その認識がない情報発信は害悪でしかないだろう。
(terracePRESS編集部)