森林、林業、木材産業による「グリーン成長」を
政府は先ごろ、今後の森林・林業・木材産業に関する施策の基本方向を明らかにする新たな森林・林業基本計画を閣議決定した。今回の計画は「森林・林業・木材産業による『グリーン成長』」をキーワードにし、森林の適正管理を行い、林業・木材産業の持続性を高めながら成長発展させることで、2050カーボンニュートラルも見すえた豊かな社会経済を実現することを目指している。
日本の森林は、国土の約3分の2を占め、国土保全や水源涵養などの恩恵を国民にもたらす「緑の社会資本」と言える。また、林業・木材産業は、地域の経済社会の維持発展に重要な役割を果たす産業で、木材を利用することはCO2の排出抑制や炭素貯蔵を通じて循環型社会の実現に大きく寄与できるものだ。
今回の計画は「森林資源の適正な管理・利用」「『新しい林業』に向けた取組の展開」「木材産業の「国際競争力」と「地場競争力の強化」「都市等における『第2の森林』づくり」「新たな山村価値の創造」などを進める。
「森林資源の適正な管理・利用」については、適正な伐採と再造林の確保、治山対策などによる国土強靱化、針広混交林の造成などを促進する。
また、「新しい林業」を創出するため、優れた性質をもつ木を選抜し、それらを交配して生まれる特別に優秀な木である「エリートツリー」を活用するなど林業のイノベーションを推進する。
また、都市部に〝第2の森林〟を作るために、都市・非住宅分野等への木材利用の促進を盛り込んだのもポイントだ。すでに新たな木質部材の開発などで、木造住宅の既存分野以外でも木材の利用が広がりを見せ始めているが、さらに、防耐火や構造計算に対応できる部材の開発・普及、JAS製材の供給体制の強化などで、中高層建築物や非住宅分野などでの新たな木材需要の獲得を目指すとしている。
付加価値の高い木材製品の輸出についても推進するほか、さらに、木質バイオマスの発電・熱利用や、風力・地熱発電のための林地の適正な活用を通じて再生可能エネルギーの利用も促進する方針だ。
これらの取り組みを通じ、製造時のエネルギー消費が少なく、炭素貯蔵効果の長期発揮が期待できる木材の利用を促進するとともに、温室効果ガスの排出削減にも寄与し、循環型社会の実現を図ることを目指す。
森林・林業・木材産業は、気候変動に伴う山地災害などの増加や、少子高齢化、人口減少による人手不足が問題となっているほか、国内新築住宅市場の縮小、新型コロナウイルス感染症の流行など、大きな課題に直面している。
森林・林業関係者がこうした課題を知り、乗り越えていくための努力が求められることは当然だが、それを行うためには都市生活者を含めた国民1人ひとりの理解や協力が不可欠だ。そのためには、政府としての広報活動も重要となる。
(terracePRESS編集部)