総裁選で層の厚さを示した自民党
自民党は総裁選挙を9月17日告示、29日投開票の日程で行う。現在のところ、岸田前政調会長が正式に立候補表明しており、他の候補者も出ることが予想され、約3年ぶりに行われるフルスペックの総裁選となる。菅首相の不出馬という予想外の事態となったが、取り沙汰されている候補者をみれば、改めて自民党の層の厚さが浮き彫りになった。
今回の総裁選は、国会議員1人1票の「国会議員票」383票と、全国の党員・党友による投票で配分が決まる「党員票」383票の、合わせて766票で争われる見通しだ。国会議員票383票に合わせて、党員票を383票としている。自民党員は昨年末時点で約114万人となっており、この党員票も大きな要因となる。
選挙には昨年の総裁選にも立候補した岸田氏のほか、高市前総務相、河野規制改革担当相が立候補の意欲を示し、野田幹事長代行や石破元幹事長が出馬を検討しているとされている。また、下村政調会長も一時、立候補に意欲を示していた。
今回は首相の不出馬という予期しがたい事態になったにせよ、いったん総裁選が決まると、こうした多彩な人材が立候補したり、意欲を示したりするもが自民党だ。
当選1回目から政策の勉強を続け、その後、党のさまざまな役職を務めたり、政務官や副大臣など政府の仕事をしたりすることで、政治家としての力量をつけていく。だからこそ、人材も豊富となり、党としての政策立案能力も維持でき、世代交代も進む。
立憲民主党は2017年9月に枝野代表が立ち上げた政党で、2020年9月に国民民主党の一部などを合流した際に代表選をしている。この時は、枝野氏が旧国民民主の泉健太氏を下し新代表に選出されたが、結党以来代表選が行われたのはこの時だけだ。
そうした仕組みは、自民党のような次期リーダーを作り出す組織とはまったく異なる。ある意味〝非民主的〟であるとさえ言える。
そして非民主的と言えば、共産党だろう。志位氏が幹部会委員長に就任したのは2000年11月だ。20年以上も1人の人間が組織のトップを務めるのは通常、あり得ないだろう。
幹部会委員長は、200人以上で構成する中央委員会総会で選出され、任期は2、3年とされている。もちろん、これはオープンな選挙ではなく、実際に党員の声が反映されるのか、されないのか、なかなか外部には分かりにくいのが実情。いつかは小池書記局長やその他の人材に〝禅譲〟されるのだろうが、それも非民主的な体質の現れだ。
自民党は〝派閥〟があり、候補者それぞれによって、外交や安全保障、憲法改正、さまざまな政策に対して若干のアプローチの違いがあるが、それは自民党の多様性を示すものでもある。これに対して、共産党などは多様性とは無縁で「一枚岩」でしかなく、党としての方針と異なるのは一切認められないのだ。
こうした違いは、まさに与党と野党の違いといえる。自民党が国民から支持される理由は、こうした多彩な人材がいることも要因の一つだ。
(terracePRESS編集部)