連合「支援政党明記せず」は正しい選択
労働組合の中央組織の連合は、夏の参院選で支援政党を明記しない方針を加盟組合に伝えた。政党と政策協定を結ばず、共産党と「野党共闘」する候補者は推薦しないという。昨年の衆院選では、共産党と共闘を色濃くしたことで大敗した立憲民主党が、未だ総括もしない中で、連合が〝健全な野党〟作りのための一歩を踏み出した形だ。
連合はこれまで、民主党を源流とする政党を支援しており、昨年の衆院選も立憲、国民民主両党とそれぞれ政策協定を個別に結び支援した。ただし、その政策協定には「左右の全体主義を排し」という項目が入っており、共産党との共闘を牽制している。
一方、立憲、共産、社民、れいわの野党4党は「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」、いわゆる「市民連合」を媒介とした政策合意を行った。合意には市民連合が国民民主にも呼びかけ協議したが、国民民主は参加しなかった。この国民民主の不参加は、共産党との共闘を否定したものと考えられている。
また、立憲民主党は共産党と、立憲民主党が政権を獲得した場合、市民連合と合意した政策を実現する範囲内で、共産党が閣外協力するという合意を締結し、共産党との共闘を深化させた。連合は、この合意についても批判していたが、立憲・共産はその批判を受け入れず、共産党の志位委員長が「画期的」と評価した合意に突き進んだ。
こうした合意によって野党の選挙協力も進み、全国213の選挙区での統一候補を擁立。「国政選挙における初めての本格的な野党共闘体制による選挙戦」(市民連合の「衆議院選挙の総括と今後の取り組み方針」)となった。しかし、その結果を見れば、有権者がこうした共闘を容認しなかったことは明白だ。
今回の連合の方針では、組織内候補以外の候補者の推薦基準として「目的が大きく異なる政党や団体等と連携・協力する候補者は推薦しないという姿勢を明確にする必要がある」と盛り込んでいるという。
そもそも、共産党は社会主義、共産主義の実現を目指す政党だ。そこにあるのは民主主義も存在しない社会の構築だ。言論の自由もなくなり、天皇制も日米安保体制も容認しない、そんな政党だ。
そうした政党と共闘しているのが他の野党なのだ。基本的な理念や考え方が異なる政党同士が選挙の票目当てに協力する、つまり野合だ。基本的な違いを隠しての共闘は、有権者を欺く行為でもある。
今回の連合の方針は、立憲支持の官公労系と、国民民主支持の民間産別労組の対立が深刻化するのを避けるための連合内部の理由との見方ももちろんある。しかし、日本が持続的な成長を遂げ、その果実を配分するという成長と分配の好循環を作ることは、企業にとっても労働者にとっても重要なことだ。それが安心して暮らせる社会を作るということだ。
参院選では1人区が全国に32あり、その1人区が勝敗を分けるとみられている。今後、野党が共闘態勢を作るのか否かはまだ不透明だが、有権者は選挙目当ての野合だけは拒否しなくてはいけない。
(terracePRESS編集部)