ますます重要になる日米豪印のクアッド
岸田政権は5月下旬に日米豪印4か国(クアッド)の首脳会談を開催する。それに合わせて日米首脳会談も行われる。ロシアによるウクライナ侵略という事態を受けて、インド太平洋でも現状変更の脅威が高まっている中で、一連の首脳会談が日本で行われることは、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて日本が重要な責務を負うということにほかならない。
日本は安倍政権の時代に「自由で開かれたインド太平洋構想」を打ち出し、それが岸田政権にも引き継がれている。
ロシアによるウクライナへの侵略は、現代社会においても世界の主要国が堂々と他国の主権を踏みにじり、国民の生命や財産を侵害するという事態が発生するということをまざまざと見せつけた。
これは法の支配や人権の尊重、秩序の維持という原則を持たない国があるということだ。それを「多様性」という言葉で言うのなら、世界は「多様性」のある社会であり、それが現実だ。
だからこそ、法の支配に基づき力による現状変更を認めないための努力が必要となる。
「自由で開かれたインド太平洋」について日本は「法の支配を始めとする共通の価値や原則に基づく、自由で開かれた秩序を実現することにより、地域全体、ひいては世界の平和と繁栄を確保」するためのものと位置付けており、これが実現しなければ、インド太平洋の秩序は侵されてしまう。
インド太平洋は、北米・南米大陸の西岸からアフリカ大陸の東岸までを含み、世界人口の半数以上となる地域で、世界の活力の中核ともいえる。その一方で、各国の力関係の変化が激しい地域でもある。
事実、南シナ海では中国が一方的に領土、領海を主張し、建設した人工島を軍事拠点化することも行われている。
こうした中で、法の支配などルールに基づく国際秩序の確保や航行の自由だけでなく、自由貿易の推進を通じて、この地域の平和や安定、繁栄を促進しようというというのがクアッドの考え方だ。
だから、自由貿易の推進はもちろんだが、インド太平洋沿岸国への海上警備の能力強化の支援や、港湾、鉄道、道路、エネルギー、ICTなどのインフラ整備支援、人的支援などアジア太平洋地域の連結性を高めることが必要と考えられている。
3月3日に行われたクアッドの首脳テレビ会議では「今回の(ロシアの)ような力による一方的な現状変更をインド太平洋地域においても許してはならないこと、こうした状況だからこそ、『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向けた取組を一層推進していくことが重要であるとの認識で一致」している。
これに続く会議が5月に開催されるわけで、岸田首相にはクアッドの取り組みをさらに深化させることが期待される。
(terracePRESS編集部)