共産党の「自衛隊活用」は選挙目当てのまやかし
共産党が、有事の際に自衛隊を活用するとの考えを主張している。自衛隊を違憲と位置づけて散々批判し、党綱領では解消を掲げているのにも関わらず、火急の際にはその自衛隊で国を守ることを強調するというご都合主義だ。ウクライナ情勢で国民の安全保障への関心が高まる中で、参院選を意識した国民を欺く〝自衛隊活用論〟でしかない。
志位委員長は記者会見で「急迫不正の主権侵害が起こったときはあらゆる手段を行使する。当然、自衛隊にも頑張ってもらう。それは2000年の党大会で決めた方針だ」などと主張している。
確かに、共産党は2000年の第22回党大会で、「自衛隊問題の段階的解決」という方針を決めている。段階的に解決するということは、自衛隊解消を目指すということにほかならないが、解消するまでに「自衛隊と一定期間共存する期間」(志位委員長)があり、その期間に有事となったら「自衛隊を活用する」というのが共産党の主張だ。
事実、党綱領では現在「自衛隊については、海外派兵立法をやめ、軍縮の措置をとる。安保条約廃棄後のアジア情勢の新しい展開を踏まえつつ、国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる」と規定している。
つまり、共産党は、もし政権を担ったら自衛隊を段階的に縮小しながら自衛隊の解消を目指すわけだ。そして、その期間にもし急迫不正の主権侵害があった場合は、その自衛隊の防衛力で自衛力を行使すると言っているのだが、その時点の防衛力がどのようなものになっているかは不明だ。
そしてさらに重要な視点は、日米安保条約だ。共産党の綱領では「日米安保条約を、条約第十条の手続き(アメリカ政府への通告)によって廃棄し、アメリカ軍とその軍事基地を撤退させる。対等平等の立場にもとづく日米友好条約を結ぶ」としている。在日米軍基地はなくなるだろうが、米国には対日防衛義務もなくなるのだ。
結局、共産党は「急迫不正の際に自衛隊を活用して主権を守る」とは言っても、対日防衛義務を規定した日米安保条約を廃棄している状況の中で、段階的に縮小した自衛隊が独力で防衛すると言っているに過ぎないのだ。
これで果たして、日本の主権や国民の生命・財産を守ることができるのだろうか。
防衛力は抑止力だ。日本へ侵略しようと企図した国が日本の防衛力が脆弱だと判断すれば、躊躇することもなくなる。防衛力を縮減するということは、他国に対してそのようなメッセージを出すことだ。つまり、侵略されやすい国を目指しているということになる。
確かに、自衛隊を違憲と位置づけながら、火急の際はその自衛隊を活用するという共産党の主張は、ロシアのウクライナ侵略を受けて唐突に言ったわけではない。「2000年の党大会でその方針を打ち出した」という主張は正しい。
しかし、日米安保がない状況の中で、有事があった場合に、縮小した自衛隊で防衛するというのは、そもそも、日本の主権や国民の生命・財産を危険にさらすということと同義なのだ。
(terracePRESS編集部)