日米の関係を一段と深化させた首脳会談
日米の関係が一段と深まった。先ごろ行われた岸田首相とバイデン米大統領の日米首脳会談では、インド太平洋経済枠組み(IPEF)の立上げや、日米間の安全保障・防衛協力を拡大、深化させていくことで一致するなど、緊張が高まる国際情勢やアジア情勢を受け、経済、防衛で絆を一層深化させる新しい日米関係のスタートとなった。
首脳会談では、両首脳が、地域の経済秩序への米国の関与がますます重要となっているとの認識を共有した上で、バイデン大統領がインド太平洋経済枠組み(IPEF)の立上げを表明。これに対し、岸田首相は、IPEFへの参加・協力を表明しながら、戦略的な観点から米国のTPP復帰を促した。
IPEFは、TPPやRCEPのような経済協定になるだろうが、米国はいずれも参加しておらず、RCEPには中国も参加しているという現実がある。こうした経済的な枠組みとしてバイデン大統領が提唱したのがIPEFだが、ここでは「関税交渉をしない」とされている。
自由貿易を拡大するというよりも、不公正な貿易や軍事転用の疑いがある物資の輸出禁止など、インド太平洋地域で公正なルールと理念を共有していくという狙いがあるとみられている。もちろんその先にあるのは中国で、インド太平洋地域で中国をけん制する枠組みを作ろうということだろう。
今回の首脳会談でもう一つの成果は、日米防衛協力の深化だ。岸田首相はミサイルの脅威に対抗する能力を含め、防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する決意を表明。その上で「防衛費の相当な増額を確保する」考えを明らかにし、バイデン大統領が強い支持を表明している。
また、バイデン大統領は、核を含むあらゆる種類の能力によって裏付けられた日米安全保障条約の下での日本の防衛に対する米国のコミットメントを改めて表明。さらに、バイデン大統領は、日米安保条約第5条が尖閣諸島に適用されることを改めて確認したほか、両首脳は「尖閣諸島に対する日本の長きにわたる施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」ことで一致した。
両首脳はこのほか、さまざまなテーマについて議論している。ウクライナ情勢はもちろん、新型コロナ、気候変動、二酸化炭素の排出ゼロなどはもちろん、「ジェンダーについてのアイデンティティにかかわらず、全ての人が完全な潜在力を達成することができるようにすることは、道徳的かつ戦略的に不可欠であり、社会及び経済のあらゆる側面にとって極めて重要」といった認識でも一致している。
こうした国際的やアジアの緊張が高まる中で、日本と米国は民主主義的な2大経済大国として、自由で民主的な価値、規範などを共有している。こうした普遍的な価値に基づいて平和や繁栄、自由を確保することが両国の責務とも言える。
共産党の志位委員長は日米首脳会談で日米が抑止力強化を進めることで一致したことについて「軍事に対して軍事力の強化でこたえるならば、相手はさらなる軍拡でこたえることになり、悪循環とエスカレーションを招く」と批判しているが、志位委員長には、侵略から祖国を守るために懸命に戦っているウクライナ兵や国民は間違えた行為と映っているのだろう。
(terracePRESS編集部)