安保法制廃止案も参院選目当てとは
立憲民主党、国民民主党、共産党、社民、自由の5野党は先ごろ、平和安全法制を廃止するための「自衛隊法改正案」などを参議院に提出した。
廃止法案は、安保法制施行前の2016年2月に野党から衆院に共同提出され、その後継続審議となっていたが、17年の衆院解散で廃案となっていた。
今回の法案も野党側は「安保法制は違憲で、専守防衛を逸脱し立憲主義を破壊する」などと位置付けているが、実際は参院選を目当てにした〝選挙戦術〟にすぎない。
事実、法案提出後に各会派は記者会見したが、そこで共産党の井上哲士参院国対委員長は「2015年の安保法制強行後の16年参院選での『市民と野党の共闘』の原点が安保法制の廃止だった」と指摘。「参院選前に改めてこの原点を確認する形で廃止法案を出したのは大変意義深いことだ」と強調している。
これは驚くべきことだ。つまり、今回の安保法制廃止法案が、参院選で野党共闘を進めるための鎹(かすがい)であることを自ら認めているのである。国民の生命財産を守るための政策でさえ選挙に利用しようという野党の考えは、あまりにも品がないし、あまりにも視野狭窄で愚劣だ。
そもそも、安保法制は集団的自衛権の行使を一部認めているが、その行使には ①日本の存立を脅かす明白な危険がある(存立危機事態) ②他に適当な手段がない ③必要最小限度の実力行使にとどめる-という3つの要件がつけられている。
存立危機事態とは他国が攻撃され、日本の存立が脅かされる事態だが、例えば武力攻撃を受ける米艦の防護、ホルムズ海峡での機雷掃海―などが想定されている。
もし、日本へ石油を輸入するための重要なルートであるホルムズ海峡が機雷封鎖されれば、日本の存立が危機を迎える。国民が安心して生活することができなくなるが、そのような事態の場合は、集団的自衛権を一部行使するというわけだ。
いうまでもなく、日本を取り巻く環境は年々厳しさを増している。周辺諸国の軍事的な能力も向上しており、万が一の場合に備え、国民の生命財産を守るための法制度を整備しておくことは当然ながら必要だ。
「見ざる、聞かざる、言わざる」の日光東照宮の三猿は人間の叡智の3つの秘密を示しているというが、別の意味で廃止法案を提出した野党は、日本の内外環境について三猿のような態度をとり、ただ参院選目当てで廃止法案を提出したのだ。
その証拠に、野党は、日本の安全を守るための対案らしきものすら提示できない。たぶん、野党は「平和」「平和」と念じていれば、平和が実現できると思っているに違いない。そのような空想的平和主義で国の安全を守ることができるとすれば、世界のどの国も軍事力など整備しない。現実の世界がどう動いているのか、その視点すら持ち合わせない野党は、到底、政権など担当できないだろう。
(terracePRESS編集部)