国民の気の緩みはメディアの責任も
昨年末からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大については、残念ながら国民の気の緩みも要因の一つとして議論されている。3密、5つの場面を避けるというウィズコロナの生活様式から離れ、夜の飲食や宴会などの場面で感染するケースが感染拡大を招いたといわれている。その気の緩みに注意喚起するのはもちろん政府の役割でもあるが、実はメディアの国民への啓発が不足したという側面もあるようだ。
公益財団法人「新聞通信調査会」という団体が毎年、メディアに関する世論調査を定点観測的に行っているが、今回はコロナ禍でもあり、コロナとメディアの関係についても調査している。
調査ではまず、各メディアの情報の信頼度を、全面的に信頼している場合を100点、全く信頼をしていない場合は0点、普通の場合は50点として点数をつけてもらう形式で調べているが、平均点が最も高かったのが「新聞」で69.2点、次いで「NHK テレビ」69.0点、「民放テレビ」 62.0点となり、国民が新聞を信頼できる情報を提供するメディアと位置付けていることを示した。
新型コロナが広がる前後でのニュースを提供するメディアとの接触の変化については、民放テレビが43.9%、インターネットが41.3%、NHK 32.7%、新聞22.6%、ラジオ6.9%となった。ただし、新聞、NHK、民放、ラジオとも「変わらない」が最多だった。
その一方でインターネットは、「増えた」が「変わらない」を上回っているが、ネットのニュースのほとんどが従来のマスメディアのニュースであることを考えれば、国民はネットを介して新聞やテレビのニュースに触れる機会が増えたといえる。
新型コロナに関する情報入手方法については、「民放テレビ」が最多の78.6%となり、「NHK」 59.5%、「ポータルサイト」 41.7%、「家族や友人」 32.4%、「新聞(全国紙)」が 31.4%という結果だった。
では、新型コロナに対する行動変容、自粛行動に影響を与えたものは何だったのだろう。調査によると、「新聞やテレビなどメディアの報道」を挙げた人が68.0%と最も多く、「国の発表や要請」が 59.1%、「自治体の発表や要請」が 40.3%、「家族や友人」が 31.9%、「会社など職場からの要請」が 29.3%だったという。
この調査は2020年10月30日から11月17日に18 歳以上の男女5000人に対して行った。ちょうど国民の気の緩みが顕著になっていた頃だ。国民の多くは、メディアのニュースに接することで、夜の飲食や飲み会に対するハードルを下げたのだ。もちろん、そこには「国の発表や要請」が乏しかったこともあるのだろうが、メディアは自らの国民への情報提供が新型コロナの感染拡大阻止に寄与したか否かという思いもないままに、政府だけを批判しているのだ。
感染症のような〝国難〟に対して、国民に啓発することもメディアの責務だ。事実、ウィズコロナ、新生活様式という言葉はメディアから消え去っている。その責任を果たさなければ、国民の〝代弁者〟にはなりえない。
(terracePRESS編集部)