山尾氏国民入党に見る立憲・国民合流のまやかし
今年3月に立憲民主党を離党した無所属の山尾志桜里衆院議員が先ごろ、国民民主党に入党した。
山尾氏と言えば、元検察官で憲法改正については「議論をすべき」という立場で政治活動を続けている。折しも、立憲民主党と国民民主党では合流に向けた協議が進んでいるが、山尾氏の国民入党は、まさに両党の合流話が選挙目当てのまやかしであることを示している。
山尾氏は2009年8月の衆議院議員選挙に民主党公認で愛知7区から出馬し、初当選を果たしている。民進党時代には、一時は幹事長に内定し本人も受諾したが、週刊誌が男性弁護士との交際疑惑を報じたことなどから取りやめになったこともある。その後、無所属で2017年の衆院選に当選し、立憲民主党に入党した。
立憲を離党した直接の理由は新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するための新型インフルエンザ特措法改正法案の採決で、山尾氏は党の方針に反して反対した。同特措法への対応が与野党の国対レベルで決まったことが、立憲党員として非民主的手続きを容認した、ということだという。
山尾氏は憲法改正について、賛成や反対などそれぞれの立場があっても、国会で議論すべきと主張している人物だが、そういう点では、特措法改正に国対レベルで決めた党に不満を持ったのだろう。
もちろん、新型コロナのまん延が懸念されたあの時点で、国民の生命を守るために国会としても即断が不可欠だったわけで、その点、山尾氏は政治家として国の危機管理にどう対処すべきかという認識が希薄なのだろう。
その山尾氏が離党した立憲と、入党した国民の両党が14日夜、連合を交えて新型コロナウイルスを踏まえた新たな社会像の構築に向けた3者協議の初会合を開いた。両党は8月半ばまでの取りまとめを目指しているが、これを契機に両党の合流を促進することを狙っているという。
しかし、政党の合流は新型コロナ後の社会像という共通認識だけでは、もちろん事足りない。基本政策の一致が必要だ。社会保障、安全保障、災害対策、少子高齢化、地方活性化など政治に求められるテーマは膨大だ。それらの政策に対する考え方や手法が一致して初めて一つの政党になれるのだ。
憲法改正もその重要なテーマだ。山尾氏は憲法改正論議について、立憲は議論することも認めないなどと述べているが、憲法改正という基本的な問題への考え方にすら両党には溝があるのだ。
もしそうした溝を埋めないまま合流を果たしても、それは選挙目当ての数合わせにしかすぎず、有権者を愚弄するものだ。
(terracePRESS編集部)