同じ事実なのに朝日、読売が報じると…

同じ出来事を報じるのに、新聞によってこれだけ違いがあるという見本のような記事が掲載された。先ごろ、シンガポールで開かれた「アジア安全保障会議」をめぐる記事だ。

 

同会議では米国のシャナハン国防長官代行が演説した。読売新聞は6月2日付け朝刊の1面トップで、「米『中国は主権侵害停止を』 インド太平洋 関与強化表明」との見出しを掲げて報じた。記事は、シャナハン氏が「『中国は他国の主権を侵害し、不信を生むような行動はやめるべきだ』と要求した。インド太平洋で中国が不当に台頭することを抑えるため、米国が地域への関与を強化する姿勢も鮮明にした」などと報じた。

また、「中国の名指しを避けながら、他国に多大な借金を負わせる経済的手法や国家主導の技術窃取などを挙げ、『米国はこうした行動を拒否する。小国が周辺の大国を恐れなくてよい未来を望む』と訴えたと伝えた。

 

読売は、3面の大型サイド「スキャナー」でも「米『対中包囲網』急ぐ」との見出しを掲げ、米国がインド太平洋への関与を強化することをまとめている。

 

一方、朝日新聞は同じ2日付けの朝刊で報じているが、こちらは3面の右肩。なんと「対中牽制 抑えめな米」との3段見出しで、読売とは間逆のトーンだ。さらによくみると「名指しの批判避ける」との中見出しもあり、読売が伝えたシャナハン氏の「中国は他国の主権を侵害…」との発言がなかったと思わせるような紙面だ。

 

読売も「中国の名指しを避けながら」と報じているが、これは「他国に多大な借金を負わせる経済的手法や国家主導の技術窃取」などの部分。これに対し、朝日はシャナハン氏の演説全体で、あたかも中国の名指しを避けたような印象を受ける紙面となっている。

 

実は、朝日新聞は、シャナハン演説が抑制的だったと判断した根拠が記事中に示されているのだが、それによると「シャナハン氏の演説での対中批判は、昨年の同会議でのマティス国防長官(当時)より抑制的だった。マティス氏は南シナ海問題で中国が『脅迫と抑圧を目的に軍事利用できる』と指摘し、習近平国家主席の名も挙げて批判していた」としている。さらに朝日は中国国防省幹部の「中米両軍の利益にかなうものだった」、中国軍事科学院の何雷前副院長の「前向きで理性的だった、中米は協力を強める必要がある」とのコメントも紹介している。つまり、昨年の米国の演説に比べれば、今回のシャナハン演説は抑制的で、中国は問題視していないということを伝えたのだろう。

 

これに対して、読売は、米国がインド太平洋への関与を強化する姿勢を見せたことを重視し、報じたわけだ。

 

いずれにしても、今回の報道は、親中国である朝日新聞、米国の立場を伝えた読売でまったく異なる報道となった。

 

(terracePRESS編集部)