国益を無視するのは誰だ
日本政府の韓国に対する半導体材料の輸出管理の見直し問題を巡っては、日韓の溝がますます深まっている。韓国はこの問題を7月24日にジュネーブで開かれた世界貿易機関(WTO)の一般理事会に持ち込んで日本の不当性を批判したが、韓国を支持する動きはなく、ロイター通信は「韓国は支持を取り付けることに失敗した」と報じている。
この問題は、日本政府が、韓国を安全保障上の観点から信頼できないと判断し、半導体材料の輸出管理を見直したものだ。読売新聞7月22、23両日に実施した緊急全国世論調査によると、日本政府の対応を「支持する」と答えた人は71%に上っている。「支持しない」は17%にすぎなかった。多くの国民が政府の対応を是としているのだ。
日本人の心情とすれば、韓国は2015年の日韓慰安婦合意を一方的に破棄し、元慰安婦や遺族への支援事業を行ってきた「和解・癒やし財団」を解散したことや、自衛隊機へのレーダー照射、国際法違反にもなるいわゆる元徴用工に対する韓国の大法院判決(最高裁)とその後の韓国政府の対応などをみれば、韓国への信頼が揺らいでいるのは間違いないだろう。
しかし、そのような多くの国民の受け止め方があるにせよ、今回の輸出管理の見直しは、安全保障上の観点からの判断だ。大量破壊兵器の材料にもなりかねない半導体材料の輸出について、これまで行ってきた規制の緩和を取りやめるという話だ。
ところが、韓国側はそうは理解せず、大法院判決の報復として日本が輸出管理の見直しを行ったと喧伝している。河野外相と南・駐日韓国大使の会談でも、南大使は輸出管理の見直しと大法院判決を一つの問題として扱うかのような言動をみせた。
日本としては、河野外相が7月19日の記者会見で「輸出管理はきちんと輸出管理当局間で対話が行われている前提で、その対話が行われていなかった。というふうに承知をしているが、今、外交当局で問題解決に当たっている大法院判決に関するものとは全く関係がない」と明言している。
だが、日本国内でも韓国側の喧伝をそのまま受け入れた主張も散見されている。共産党の志位委員長は記者会見で、「両国の政治上の紛争問題、『徴用工問題』をめぐる紛争問題、この解決の手段として貿易問題を使っている。これはルール破り、『禁じ手』だ」と発言。日本が大法院判決の報復として輸出管理の見直しを行ったという韓国の主張をそのまま引き写して、政府を批判している。
河野外相の発言にもあるように日本は大法院判決についてはまさに日本は両国での協議、仲裁プロセスへの移行など「外交当局で問題解決」しようとしているのだが、それを政治上の問題と日本国内の輸出管理問題を意図的に混同しているのは韓国側なのだ。
多くの日本人が政府の輸出管理の見直しを支持している中で、民意を無視して韓国の主張をそのまま引き写して政府批判するのは、国益を無視しているということに他ならない。
(terracePRESS編集部)