誤解される統合型リゾート(IR)

観光庁は先ごろ、統合型リゾート(IR)整備に向けた基本方針案を公表した。IRはカジノを含むことから、ホテルや国際会議場など多くの施設を整備するものでありながら、カジノだけが取り沙汰されている。日本にとっても、整備を目指す地域にとっても不幸なことこの上ない状況だ。

 

基本方針ではIR整備の意義を「国際的なMICEビジネスを展開し、日本の魅力を発信して世界中から観光客を集め、来訪客を国内各地に送り出すことにより、『国際競争力の高い魅力ある滞在型観光』を実現」としている。

 

「MICE」とは聞きなれない言葉だが、「Meeting(会議・研修・セミナー)」「Incentive tour(報奨・招待旅行)」「Convention、Conference(大会・学会・国際会議)」「Exhibition(展示会)」の頭文字をとった造語で、つまりビジネスを中心とした旅行客を視野にしたものだ。

 

簡単に言えば、国内外の観光客を呼び込むために、ホテル、レストランやショッピングモール、劇場や水族館などのエンターテイメント施設、カジノ、国際会議場や国際展示場などの各施設を一体的に整備・運営しようというものだ。

カジノについてはカジノの収益により、大規模な投資を伴う施設の採算性を担保するという一面もある。

 

この基本方針では「我が国におけるMICE開催件数の増加」「2030年に訪日外国人旅行者数を6,000万人、消費額を15兆円とする政府目標達成の後押し」「訪日外国人旅行者の国内各地の観光地への訪問の増加」などをIR整備の目標として掲げているが、IR整備がこれからの日本観光の起爆剤にもなり得るわけだ。

 

しかし、残念ながらIR整備はメディアの偏った報道などでカジノばかり注目されており、実情を知らない人々に理解を得ることが難しくなっているのが現実だ。

 

そうした日本の状況をしり目に海外ではIRの考え方がいち早く取り入れられ、カジノで知られるラスベガスをはじめ、最近ではシンガポールのマリーナ・ベイ・サンズやワールドセントーサなどが知られている。

ホテルの屋上に展望プールがあるマリーナ・ベイ・サンズのホテルは、日本人でも訪れた人が多いだろう。

 

ちなみに、マリーナ・ベイ・サンズは、開発費約4870億円。敷地面積は約19万平方メートルで東京ドーム約4個分。そのうち2,561室の巨大ホテルをはじめ、約12万平方メートルの会議場・展示場のほか、ショッピング施設、劇場、博物館、スケート場、ナイトクラブなどが併設されている。

カジノは1.5万平方メートルで、テーブル600台、スロット2500台をそろえ、24時間営業しているが、決してカジノが中心の開発ではないのだ。

 

基本方針ではカジノ施設について「関係者が密接に連携して、犯罪発生の予防、青少年の健全育成、依存防止のための施策及び措置を確実に実施」「IR事業者及び都道府県等において、依存防止のために万全の対策を講ずるとともに、ギャンブル等依存症対策基本法に基づく取組を一層強力に推進。カジノ施設の有害影響排除が確実かつ効果的に講じられるものであること」と規定されている。

 

IR整備は日本の観光や地域の活性化にとって不可欠だ。それだけにカジノだけがIR整備ではないことを、まず国民に知ってもらうことが重要なのだろう。

 

(TracePRESS編集部)