緊急事態を理解できない人々
「唐突」という言葉が世の中を徘徊している。野党、メディア、情報番組のコメンテーターなどには、安倍首相がコロナウイルスによる新型肺炎の拡大阻止に向けて発表した小中学校の休校要請を「唐突」と言っているのだ。しかし、首相の要請はまさに緊急事態におけるリーダーシップの発揮と言える。これを理解できない人々は、そもそも緊急事態における対応のあり方、難しさが理解できていないのだろう。
国の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」が「感染症対策の基本方針の具体化に向けた見解」を公表したのが2月24日。見解では「仮に感染の拡大が急速に進むと、患者数の爆発的な増加、医療従事者への感染リスクの増大、医療提供体制の破綻が起こりかねず、社会・経済活動の混乱なども深刻化する恐れがある」と指摘。
同時に「感染の拡大のスピードを抑制することは可能だと考えられる。そのためには、これから1-2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となる」と述べている。
専門家会議は、感染が急速に拡大すれば、社会・経済活動の混乱が深刻化する恐れがあるとの見通しを示し、「1-2週間がカギ」と判断。安倍首相はそれを受けて3日後の27日に「新型コロナウイルス感染症対策本部」で小・中・高校などの臨時休校を要請する考えを表明したわけだ。
そして同29日には、安倍首相が記者会見し、①休校要請は断腸の思いであり、子供の健康・安全のために理解を求める ②休職を余儀なくされる保護者への新助成制度を創設する ③今後10日程度で対策の第2弾を取りまとめる ④雇用調整助成金で企業を支援する-などを表明した。
専門家会議が警鐘を鳴らしてからここまで5日間だ。専門家会議の「1-2週間」に当てはめれば14日間のうち5日間を費やしたわけだ。土日を挟んだわけだから5日間で多くの学校で休校措置ができたのだ。
安倍首相の要請を「唐突」と批判する人々は、「もっと根回しをしろ」「現場の意見を聞け」「ほかの対策も同時に実行しろ」など主張はさまざまなのだろうが、今回の安倍首相の決断でも5日間を費やしたのだ。「根回し」「現場との調整」などをしていたら、あっという間に2週間は過ぎて行ってしまっただろう。
「唐突」と批判する人々は、時間軸すら考慮できないに違いない。だからこうした人々は、緊急事態への対応のあるべき姿が理解できないのだ。
もちろん日本は民主国家だから、法的手続きは踏まなければならない。そのために法律が必要であれば今後、立法措置をする必要がある。また地方自治の本旨にのっとり、休校の判断は学校設置者である地方自治体などが責任をもって行わなければならない。
安倍首相は、そうした手続きを前提としながら、今できることを最大限にスピーディーに実施する必要があると判断したのだ。それが緊急事態におけるリーダーシップの発揮というものなのだろう。
(terracePRESS編集部)