岸田首相「新しい資本主義の主役は地方」
岸田首相は通常国会の施政方針演説で、「新しい資本主義」の実現に向けて強い決意を示した。新しい資本主義は、現在、持続可能な経済社会の実現に世界規模で動き出した「経済社会変革」と軌を一にするものだ。成長戦略と分配戦略の2つを柱としているが、成長戦略の成功の鍵は地方の活性化が握っている。
首相は演説で「まずは成長戦略。第一の柱はデジタルを活用した地方の活性化だ。新しい資本主義の主役は地方。デジタル田園都市国家構想を強力に推進し、地域の課題解決とともに、地方から全国へと、ボトムアップでの成長を実現していく」と述べている。
地方を主役とした成長を実現するため岸田政権は「デジタル田園都市国家構想」を推進している。
東京圏への転入超過は2011年以降、増加傾向で、2020年はコロナの影響で大幅に減少したが、それでも約9万8000人の転入超過となっている。東京圏への転入超過の背景には仕事や収入、教育・子育て、医療の充実など地方が抱えるさまざまな課題の存在がある。
「デジタル田園都市国家構想」は、地方からデジタルの実装を進め、地方が抱える課題を解決することで地方と都市の差を縮め、都市の活力と地方のゆとりの両方を享受できる社会を構築することを目指している。
そのため岸田政権はインフラ整備、規制や制度の見直し、デジタルサービスの実装を進め、高齢化や過疎化などに直面する地方圏で、オンライン診療やGIGAスクール、スマート農林水産業などのデジタルサービスが活用できるよう、5G、データセンター、光ファイバーなどのインフラの整備計画を取りまとめる方針だ。
また、企業版ふるさと納税のルールを明確化することで、企業の支援による、地方のサテライトオフィス整備の取り組みを後押しし、企業や個人の都市から地方への流れを加速させる。
もちろん、デジタル以外でも地方活性化を促進する方針だ。首相は演説で「農林水産業については、輸出の促進と、スマート化による生産性向上により、成長産業化を進める。昨年の農林水産品の輸出額は、1兆円を突破した。次の目標である、2025年、2兆円突破に向け、輸出品目別に、オールジャパンで輸出促進を行う体制を整備する」と強調している。
こうしたデジタルの活用などによる地方の活性化で、新たな変革の波を起こし、日本の成長を牽引していく戦略だ。
また、成長のエンジンを作り上げていくためには科学技術、イノベーションも不可欠となるが、首相は演説で、2022年をスタートアップ企業の創出元年と位置づけ「5カ年計画を設定して、大規模なスタートアップの創出に取り組み、戦後の創業期に次ぐ、日本の『第二創業期』を実現する」と述べている。
「新しい資本主義」を実現の鍵を握るのは地方の活性化。岸田政権は地方の活性化に傾注する方針だ。
(terracePRESS編集部)