通常国会で必要な前向きな議論
第208通常国会が17日、召集された。岸田政権として初めて臨む通常国会は、成長と分配の両立を実現する「新しい資本主義」という岸田政権の看板政策を本格的にスタートさせることとなる。「国会議員の文書通信交通滞在費(文通費)や国交省の統計不正などが焦点となる」などとしたり顔で解説するメディアもあるが、新しい社会を実現するためには、前向きな議論をすることが不可欠だ。
当然のことながら、今国会でまず重要なことは予算を早期に成立させることだ。2022年度予算案は、21年度補正予算と一体として、新型コロナ対策のほか、「新しい資本主義」の実現を図るための予算と位置づけられている。また、成長戦略を軌道に乗せるための予算のほか、経済の下支えや防災・減災など国民生活を安定させるための予算案となっている。
また、今回の国会は新型コロナのオミクロン株が急激に拡大するという事態の中で開かれており、当然のことながら、コロナ対策も議論の焦点となる。政府は、病床確保などで政府や自治体の権限を強化する感染症法改正案の通常国会提出を見送ったが、これは、政府の医療体制の強化策で病床確保は進んでいる上、「中長期的な課題を6月までにしっかり洗い出した上で法改正を考えていく」(岸田首相)ため、前向きな提出見送りといえる。
予算成立にめどがつけば法案審議が本格化するが、今国会では「経済安全保障推進法案」や、子供や家庭への支援施策の司令塔となる「こども家庭庁」の設置法案が提出される見込みだ。
「経済安全保障推進法案」は、米中を始め国際社会の中でハイテク技術の覇権争いが激化する中で、日本も先端技術の流出防止や半導体などの重要物資を確保することなどを目的とするもの。電力や通信など基幹インフラを担う大企業が安全保障上問題のある機器を導入しないよう事前に審査したり、重要な製品について特定の国に依存し過ぎることを避けたりすることを目指す。
「子ども家庭庁」は、「常にこどもの視点に立ち、こどもの最善の利益を第一に考え、こどもまんなか社会の実現に向けて専一に取り組む独立した行政組織と専任の大臣」などという方針が閣議決定されており、日本の子育てに関する行政のエポックメーキングとなる。
今国会で提出される新規法案は58本となる見込みで、延長がなければ会期は6月15日までとなる。そうした通常国会の中で忘れてならないのが、憲法改正だ。衆参両院の憲法審査会では、議論が停滞している。
憲法改正の手続きを定める改正国民投票法は昨年の通常国会で提出から3年の期間を経て成立した。今国会は、その成立を受けての対応となるべきで、さらに議論を進めることが必要だ。議論すら認めないという政党は、政党としての責務を放棄することになる。
(terracePRESS編集部)