政権は担えない消費税で迷走する立憲民主
立憲民主党が次期衆院選に向け、消費税減税を巡り迷走している。発端は、消費税率5%への時限的な引き下げに言及した枝野代表自身がその直後、記者団に「選挙公約ではない」と発言したことだ。税という重要な政策をめぐる発言に重みをもたせない姿勢は、枝野氏の政治家としての資質のなさはもちろん、立憲に政権を担う能力がないことを示している。
枝野氏が消費税減税を打ち出したのは15日の内閣不信任決議案提出の趣旨説明で、「国会と国民の理解を得ながら、税率5%への時限的な消費税減税を目指す」と述べたものだ。
しかし、枝野氏は本会議直後、記者団に「選挙公約ではない。(趣旨説明の原稿を)読んでいただいた通りだ」と自身の発言の意味を説明することすら拒否。「選挙公約ではなくて、政権として実現する」と述べ、選挙公約にはしない考えを示した。
選挙公約にはせずに、しかし、政権を取った場合は、政権として5%減税に向けて法改正などを準備するというわけだ。これでは有権者には分からない。
枝野氏の時限的な消費税減税発言は、新型コロナウイルス対策の一環としてのものだ。政府は昨年、国民1人当たり10万円を給付する「特別定額給付金」を実施したが、この財源は約13兆円だった。2020年度の当初予算ベースの消費税収は約22兆円だから、ほぼ1年間、消費税を5%にしたのと同じだった。
政府は当初、低所得者向けへの給付金を検討していたが、与野党やメディアなどからの声に押されて一律10万円に踏み切ったが側面が強いが、結局、6割程度が貯蓄に回ったとの検証結果もある。
そもそも税率10%の消費税は、そのうち6.28%が国の歳出に使われ、3.72%が地方交付税を含めた地方分となっている。すべてが国の収入になるわけではない。そして、この国の歳入分は年金、医療、介護、少子化対策の社会保障4経費に使われている。幼保無償化も消費税で行われている。もちろん、消費税収だけでこの社会保障4経費を賄うことすらできていない。
もし、時限的とはいえ消費税を5%に減税するのなら、社会保障を大幅に削減するか、赤字国債の増発で賄うしか道はなくなる。
そうした重大な政策の変更を伴うのが消費税減税だ。それにも関わらず選挙公約にすらしないというのなら、有権者への背信行為にも等しい。
「万が一、次期衆院選で政権を取ったとしても、参院では自民党などの〝野党〟が多数となり、実現可能性が乏しいから公約にすべきではない」「かつての民主党が公約を実現できずに瓦解したという二の舞は避けるべきだ」といった声が立憲民主党内にあるようだが、その思考には国民生活は不在で、単なる〝政権病〟のようだ。
時限的な消費税減税であっても、その目的や政策効果、減税への対応策を公約として有権者に問うのが本来の姿だ。それすらできずに右往左往する政党はやはり、政権担当能力などないのだ。
(terracePRESS編集部)