日中、日韓で国益重視する岸田外交
岸田首相は就任以来、米国、オーストラリア、中国、インド、韓国などの首脳と電話会談を重ねている。日本を取り巻く環境は年々厳しさを増しており、外交は岸田政権の重要な課題となる。中でも、対中国、韓国とは待ったなしの外交課題があるが、岸田首相は中国、韓国側に日本の立場を明言している。今後は、日本の国益を守るとともに着実な前進が求められる。
岸田首相が中国の習近平国家主席と電話会談したのは8日。米豪露印に続く会談となった。
電話会談では冒頭、習主席が岸田首相に首相就任の祝意を伝えたが、これは菅前首相の首相就任時に続き2回目となる。もっとも、習主席と電話会談をしたのは安倍首相、菅首相、岸田首相の3人しかなく、安倍首相の場合は、すでに首脳同士が顔合わせをしている状況の中での電話会談だったから、就任直後に電話会談をしたのは菅首相、岸田首相しかいないわけだ。
ところで、外務省の公式発表では「岸田総理大臣からは、両国間の様々な懸案を率直に提起。その上で、こうした問題を含め、今後対話を重ねていきたい旨伝えた。また両首脳は共通の諸課題について協力していくことで一致した」としており、岸田首相が何を提起したかは明示されていない。
しかし、会談後岸田首相が記者団に「尖閣、香港、新疆ウイグル、こうした問題について提起した」と説明している。また台湾問題も言及したとされており、岸田首相は、尖閣への中国公船の領海侵入や、台湾と中国間の緊張状態、香港、新疆ウイグル自治区などの人権問題などについて日本の立場を主張したことになる。
日本では対中問題となるといわゆる〝腰が引けた〟外交をしがちになるが、岸田首相はしっかりと日本の立場を主張したと言えるだろう。
また、15日には日韓首脳の電話会談が行われ、外務省によると岸田首相が「旧朝鮮半島出身労働者問題そして慰安婦問題等により日韓関係は引き続き非常に厳しい状況にある旨述べた上で、日本の一貫した立場に基づき、韓国側に適切な対応を強く求めた」という。
菅首相の就任時に行われた日韓首脳会談では菅首相が「韓国側において日韓関係を健全な関係に戻していくきっかけを作ることを改めて求めた」とされていたことを考えると、岸田首相の「適切な対応を強く求めた」というのは、日本側の強い意思を示したものと言える。
岸田首相は会談後、記者団に「国と国との約束、あるいは条約、国際法、これはしっかり守られなければならないと思っている。韓国側からしっかりとした対応をお願いしたい」と述べており、ここでも韓国側が対応することを求めている。
文大統領は会談で、いわゆる徴用工問題について「1965年の韓日請求権協定の適用範囲に対する法的解釈に相違がある問題」だとしたうえで、「両国が外交的解決策を模索するのが望ましいと考えている。外交当局間協議と意思疎通の速度を上げていきたい」と提案したとされている。しかし、解決のために対応するのは韓国の責務であり、岸田首相はそれを求めたわけだ。
岸田政権は日中、日韓という極めて難しい外交問題を背負って船出したが、順調で適切な外交をスタートさせている。
(terracePRESS編集部)