少子化対策進める菅政権
政府は先ごろ、令和3年版の少子化社会対策白書を決定した。菅政権は、安倍前政権に引き続き、少子化対策を政権の重要課題と位置づけている。2020年5月には「希望出生率1.8」を実現するための第4次となる新たな「少子化社会対策大綱」を閣議決定しており、結婚・子育て世代、子育て家庭、地域社会、科学技術の成果の活用など総合的な対策を講じ、実効性を確保するため、施策の進捗状況等を検証・評価する体制を構築し、PDCAサイクルを適切に回すこととした。
現在、不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦は約 5.5組に一組で、2018年に日本国内で体外受精・顕微授精により生まれた出生児は5万 6979人だった。不妊は身近な問題で、少子化対策として不妊治療に関する経済的負担の軽減が重要な課題となっている。
菅首相も通常国会での施政方針演説で、「年間で5万7千人のお子さんが、不妊治療により生まれている。子どもが欲しいと願い治療を続ける皆さんに寄り添い、不妊治療の保険適用を、来年4月からスタートし、男性も対象にする。それまでの間は、現行の助成制度の所得制限を撤廃するとともに、2回目以降の助成額を倍にし、予算成立後、1月1日にさかのぼって実施する」と述べていた。
この菅首相の方針に沿って、不妊治療への保険適用について2021年度中に詳細を決定し、2022年度当初から保険適用を実施することが決まっている。
また、2004年度から行っている、不妊治療の費用の一部を助成して、経済的負担の軽減を図る助成事業については、保険適用までの間、大幅に拡充。2020年度第3次補正予算で、2021年1月1日以降に終了した治療について所得制限の撤廃や助成額の増額などを実施している。
不妊治療は職場・企業の協力が不可欠となるが、今回の少子化社会対策白書では「不妊治療と仕事の両立ができる職場環境整備に取り組むことは、個々の企業にとっても、労働者の離職の防止、社員の安心感やモチベーションの向上、人材確保などの観点から、大きなメリットがある。子供を持ちたいと切に願う方が、不妊治療を受けながら、安心して働き続けられるよう、引き続き、社会的機運の醸成や事業主への支援等を通じて、不妊治療を受けやすい職場環境整備の促進に取り組んでいく」と述べており、今後、取り組みを加速させる方針を示した。
少子化社会対策白書によると現在、企業の不妊治療と仕事の両立支援策としては ①不妊治療を受けていることを職場に知らせることで利用できる制度 ②不妊治療を受けていることを職場に知らせずに利用できる制度の二つに大別できるという。
前者の場合は「不妊治療に特化した休暇制度」と「不妊治療に特化した休職制度」があり、休暇の場合は月に1~2日程度が多く、有給の場合も無給の場合もあるという。休職の場合は、1カ月から1年程度で、長いケースで2年の休職を可能とする企業もあるという。
少子化対策はもちろん、不妊治療だけでなない。恋愛や結婚、妊娠・出産、子育てなどそれぞれのステージで、さまざまな支援をすることが重要だ。
少子化は、日本が直面している未来への隘路となっており、これを解決することが、日本の将来を決めていくことにもなる。
(terracePRESS編集部)