辺野古撤回の蛮行、愚行

米軍普天間基地の移設に伴う沖縄県名護市辺野古の基地建設を巡り、翁長雄志知事が名護市沿岸部の埋め立て承認を撤回すると表明した。辺野古での基地建設を巡っては、2015年10月に翁長知事が承認を取り消したことに関し、16年12月に最高裁が承認取り消しを「違法」と判断している。

 

新聞報道などによると、今回の撤回表明は「県庁内部にも環境保全策が不十分なことなどを理由として撤回し、その後の法廷闘争を勝ち抜くのは困難とする見方が少なくなかった」という。

 

それでも、撤回したのは、過激派や共産党などを中心とした反対派の突き上げで追い込まれたほか、知事選をにらんだ選挙戦略の一つとされている。

最終的には承認取り消し時と同様、法的に違法と判断されることになるだろうが、政府は知事選前、知事選後など選挙をにらみながら、工事の再開を行わなければならなくなる。

 

翁長氏はまだ知事選への態度を明らかにしていないが、出馬するとすれば、知事として自らの選挙戦のために辺野古基地建設を利用したことになり、不出馬なら、これほど無責任な判断はないだろう。いずれにしても、翁長氏の判断は〝蛮行〟〝愚行〟の類のものだ。

 

それはそうと、毎日新聞は7月28日朝刊に「辺野古埋め立て工事 知事選を待ったほうがよい」と題した社説を掲載した。驚くのはその内容だ。社説では「普天間飛行場の危険性は誰の目にも明らかなのに、辺野古への移設をめぐってここまでこじれた原因は安倍政権の強権的な姿勢にあるといわなければならない」としている。

 

もちろん、現在の状況は安倍政権下で起こっていることだから、安倍政権が責任を負うべきものだが、ここまでこじれた原因は安倍政権にないことは誰の目にも明らかだろう。

 

移設を巡っては、地元の名護市長として初めて1997年に比嘉鉄也市長(当時)が受け入れを表明、98年に岸本建男市長(当時)が15年の使用制限や地域振興などの条件を付けての受け入れを表明、その後の島袋吉和市長(当時)も現行のV字形滑走路案で合意している。

 

この状況がガラリと変わったのが民主党政権時代に鳩山由紀夫首相が辺野古以外の移転先の見通しが全くたたないままに「最低でも県外」などと発言したからだ。それで一気のこの問題がこじれたのであり、安倍政権はそのこじれた糸をどうほぐすかに腐心してきたのだ。

 

社説は続けて「(安倍政権は)4年前の知事選で示された民意と向き合うどころか、移設反対派を抑えつけ、県との対立をエスカレートさせてきた。今年2月の名護市長選では現職を落選させるため、補助金を使って住民の分断をあおった」と指摘している。

 

民主党政権がこじらせたことにはあえて目をつぶり、反対派の翁長知事が4年前の知事選で当選したのだから、それが民意だという。

 

その一方で、今年2月の名護市長選では反対派の中心人物であった現職の稲嶺進氏が落選したのは、補助金を使った住民の分断が行われたからだというわけだ。こちらは地元自治体で反対派の現職市長が落選しても、それは民意ではないというらしい。

こうした一方的な世論形成が、辺野古問題をさらにこじれさせているのだろう。