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2020.08.07

改めて感じるメディアの無責任ぶり

「他人の批判ばかりしていると、信頼されなくなる」。実社会で生活しているとそんな言葉を耳にする。批判するのは簡単だから、他人のことばかり批判し、「ではどうすればいいのか?」と問われると、途端に口をつぐむ。世の中には実際にそんな人もいる。
朝日新聞の8月3日付け朝刊の社説「氾濫への備え 『複眼』で幅広く検討を」は、まさに批判ばかりをする人を地で行くような社説だ。

社説は、熊本県などに多大な被害をもたらせた「7月豪雨」を取り上げている。その熊本豪雨では球磨川が氾濫などして多くの被害が出た。球磨川の支流ではかつて川辺川ダムの建設が計画されたが、2008年に蒲島熊本県知事が反対を表明し、当時の民主党政権が09年に中止を決めた。

今回の豪雨被害をめぐり、川辺川ダムが建設されていたら被害を防止や軽減できたのではないかと言う主張があることに、社説は「ダムが下流の水位を抑える効果をもつのは確かだが、問題は単純ではない。計画は65年に起きた水害をもとに『2日間の総雨量440ミリ』が前提だったが、7月上旬の豪雨では、24時間で400ミリ超の雨が球磨川流域の各地で観測されたからだ。雨量が想定を超えれば、ダムの決壊を防ぐために緊急放流を迫られる。実際、今回も球磨川上流にある市房ダムが緊急放流寸前の事態となった。2年前の西日本豪雨では、愛媛県内での緊急放流が被害を拡大させたとして裁判になっている」と主張している。

ダムの効果を認めつつも、今回の豪雨は想定雨量を超えていたから、被害を防止できなかっただろうという主張のようだ。それも、全く関係ない2年前の西日本豪雨を引き合いに出しながら、もし川辺川ダムがあっても緊急放流で被害が甚大になったと言いたいようだ。

「もし川辺川ダムがあったらどうだったか」という議論は、仮定の質問に答えを出すことが目的ではない。毎年発生する豪雨対策にどのような手立てが必要かと言うことだ。だから、ダムの効果を認めるということであれば、今後、想定雨量を見直すなどダムによる被害軽減対策を再構築すべきという結論になるべきだろう。

また社説は、同時に、ダムによらない治水を追求し続ける考えを示した蒲島知事について「この12年間の対応が問われよう。国と県は、川底の掘削や堤防かさ上げ、遊水地の設置などを組み合わせた10のダム代替案をまとめたが、その事業費は2800億~1兆2千億円、工期も45~200年に及ぶ。実現の可能性を含め流域の市町村と検討作業を急がねばならない」と批判している。

また、国土交通省については「7月、流域治水という考え方を打ち出した。ダムや堤防だけに頼らず、避難体制の強化や土地利用の見直しも含め、官民が協力し被害を防ぐ狙いだ。施設整備への偏重がしばしば批判されてきた国交省の『転換』が注目されている」と述べている。

結局社説は、ダムによる治水も蒲島知事を批判だけして、国交省の治水に対する考え方について「注目されている」だ。そこには何の提言も提案もないのだ。

(terracePRESS編集部)

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