大変革期のカジ取りは?
自民党の総裁選が9月に行われる。メディアは早くも安倍首相と石破茂・元幹事長の一騎打ちの見込みとか、野田聖子氏が立候補できるかどうかなど紙面をにぎわしている。
自民党の総裁選びは、野党の現状からすると、おのずと〝首相選び〟ということになるが、それにしては、メディアは地に足の着いた議論をしているとは言えない。必要なのは、単なる「誰がなるべきか」という問いではなく、「現在のような大変革期にカジ取りをゆだねるのは誰か」と問題意識だ。今回、まさに今年行われる総裁選を論じるのであれば、不可欠なのは時代認識だ。今という時代は大変革期という認識を持って、その上で「誰がふさわしいのか」のかをメディアは問うべきだろう。
安倍政権は、今まさに経済社会が直面している社会を「Society(ソサエティ) 5.0」と位置付けている。「Society 5.0」とは、「狩猟社会」「農耕社会」「工業社会」「情報社会」に続く、人類史上5番目の新しい社会のことだ。IoT、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータといった先端技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れ、経済発展と社会的課題の解決を両立させる新たな社会のことだ。
換言すれば、少子高齢化が急速に進展する中で、新技術を利活用して新しい社会を作り出す。これが、これからの政権に求められるということになる。
安倍政権が6月15日にまとめた「未来投資戦略2018」では「日本は、人口減少、少子高齢化、エネルギー・環境制約など、様々な社会課題に直面する『課題先進国』」とする一方で「現場からの豊富なリアルデータによって、課題を精緻に『見える化』し、データと革新的技術の活用によって課題の解決を図り、新たな価値創造をもたらす大きなチャンスを迎えている。日本は、世界に先駆けて人口減少に直面することから、他国に比べ、失業問題といった社会的摩擦を引き起こすことなくAIやロボットなどの新技術を社会の中に取り込むことができるという点で優位な立ち位置にさえある」と強調している。
その上で「未来投資戦略2018」として、「従来型の制度・慣行や社会構造の改革を
一気に進める仕組み」を取り入れるなど、意欲的な取り組みや目標を策定している。
アベノミクスの先の経済政策の必要性を問うているメディアもあるが、アベノミクスは経済社会の現状を分析しながら、〝この先〟に必要な政策を大胆に取り入れている。例えば、次世代モビリティ・システム、次世代ヘルスケア・システムの構築、デジタルガバメントの推進などの実践。これらの革新への基盤づくり、人材育成や大学改革。また、大胆な規制・制度改革、プラットフォーマー型ビジネスに対応したルール整備を進めるという。もちろん、そこには痛みを伴うかもしれないのだが、これからの日本の経済社会を発展させるために、大変革期との時代認識のもとに、先進的な取り組みを行う路線を敷設している。
先進国では新しい技術が続々と生まれている中で、少子高齢化が急速に進む日本は、今後数年間のカジ取りを誤れば、たちまち衰退してしまう。石破氏がどのような時代認識を示し、どのような社会を作り出そうと考えているのか。安倍政権が進めている「Society 5.0」のような社会の構築をしのぐ青写真を示せるのかどうか、メディアはそこを問わなければならない。