視野狭窄、勉強不足の民放TVでいいのか
新型コロナウイルス感染症をめぐる民放テレビの情報番組の劣化は目を覆うばかりだが、最近も驚くべきコメントを堂々としているケースがあった。視野狭窄、勉強不足など、テレビでコメントを出す者の責任感などまったくないかのようだ。
その代表がフジテレビの「バイキング」で司会を務める俳優の坂上忍氏だ。
1日の放送では、ゲストの政治評論家が、医療体制について「法律で1回指定感染症が陽性になると、完治するまで普通の宿泊施設に移せないことになっている。それを厚労相に言って、柔軟性はありますって言われているが。実は昨日、小池(都知事)さんがお願いに行ったら、ダメだと言われたという風に言われている。ですからオリンピック村に軽症の人を移す、そして病院に集中的にやるという濃淡がつけられればいいんですが、それがままならないと」と説明した。
そのコメントを聞いた坂上氏は「自分たちの身を守るためだったら何だかしらないけど、法を飛び越えたやり方を今までしてきて、文章なんてちょろちょろ書き直してたわけじゃん。改ざんなんかしちゃってさ。こういう時にさ、ちょっとそういう問題じゃないんだって、今は!政治判断してくれないとダメなんじゃないの!」と語気を強めたという。
小池都知事が厚労省に要請した点の真偽は分からないが、確かに現在は、PCR検査で陽性となると、全員入院することになっている。これが医療崩壊につながる可能性があるということで、この政治評論家は指摘したのだろうが、現実は違う。
すでに、政府は、地域で感染が拡大した状況になった場合、無症状者と軽症者については、自宅での安静・療養を原則とすることも示しており、3月1日には各都道府県などに通知もしている。
もちろん、感染症指定医療機関に限らず一般の医療機関などで病床を確保しても「重症者や重症化するおそれが高い者に対する入院医療の提供に支障をきたすと判断される場合」に行われる対策なのだが、現実にはこのような対応の準備をしているのだ。
情けないことに、テレビでコメントをいうという重大な責務があるはずの坂上氏がそれを知らないだけなのだ。勉強不足というしかない。
また坂上氏は、安倍首相が前日の3月31日に、自民党の緊急経済対策についての提言を岸田文雄政調会長から受けた際、「未来に夢を持てる日本に復活させていく」と決意を述べたことに対して「“未来”じゃない。“今”な訳だ。ですよ」と述べ、自粛などで生活が厳しい人たちを飲み仲間に例えて「なかなか、おごってくれないな、この先輩みたいな感じがしちゃうのよ」と皮肉っている。
確かに、今の国民の生活を支援することは必要なのだが、その支援のための財源を国債で賄えば、その債務は将来世代に引き継がれることになる。国債は国の借金であり、国の借金は国民の借金だ。
坂上氏の頭にはそもそも、政府=国民という発想が皆無なのだろう。政府、つまり国は未来永劫、新型コロナウイルス感染症が歴史の教科書に記載される時代になっても続いていくのだ。
そう考えれば、坂上氏だって「なかなか、おごってくれないな、この先輩」との茶の間受けを狙っただけの言葉であっても、実際は「なかなかおごってくれないな、この後輩」とするのが正しいとすることが分かるはずだ。
もちろん、そうした中でも影響を受けた人々への支援が必要なことは言うまでもない。だからこそ、影響を受けた人への支援や将来への投資、国の財政などさまざまな観点から検討して経済対策は策定しなければならない。
(terracePRESS編集部)