特定の人を有利にしたのが石破氏
自民党の石破茂元幹事長は、毎日新聞のインタビューで、近く総裁選への立候補を表明する意向を示した。3日付け朝刊によると、石破氏は総裁選で掲げる政策について「95%はできている」「無投票はあり得ない」などと述べ、立候補の準備が整っていることを強調した。
また、憲法9条の改正問題については、9条1項(戦争放棄)と2項(戦力不保持)を維持したうえで、自衛隊を明記するという安倍首相の考え方に対して石破氏は「第1項と第2項をそのままにするのは論理が通らない。論理が破綻している会見には賛成できない」と明言し、持論の第2項の削除を総裁選でも掲げる考えを示した。
インタビューでは経済政策についての詳細は分からないうえ、消費税の引き上げについては「(財政規律の是正に向けて)引き上げは一つの手段として極めて有効だ。しかし、消費税を上げて社会保障を削減するのは政治ではない。個人消費を喚起するには、特に低所得者層の賃金を上げる必要がある」などと述べ、明確さに欠けた。
立候補表明時点では経済政策も明確になると思うが、気になるのが、首相の政治責任について語っていることだ。その点について毎日新聞の記事は「学校法人『森友学園』への国有地売却や『加計学園』による国家戦略特区を利用した獣医学部新設を念頭に「特定の人に有利な政策や有利な条件を作ってはいけない。犯罪でなければいいということではない」と述べ、首相の政治責任を暗に指摘した」と伝えている。
石破氏は「特定の人に有利な政策や有利な条件を作ってはいけない」と述べたというのだ。
獣医学部の新設問題は、民主党政権時代に総合特区制度の活用の一環で検討が始まったが、自民党政権になり、その新設問題にブレーキがかかった。そのブレーキをかけたのが石破氏だ。地方創生担当相だった石破氏が、獣医学部新設に関して ①新たな分野のニーズがある ②既存の大学で対応できない ③教授陣・施設が充実している ④獣医師の需給バランスに悪影響を与えない-という内容の「石破4条件」なるものを作り、2015年6月30日、閣議決定まで持ち込んだのだ。
この石破4条件の策定については、全国獣医師会の理事会報告に「石破茂地方創生大臣と2時間にわたり意見交換する機会を得た。その際、大臣から今回の成長戦略における大学、学部の新設の条件については、大変苦慮したが、練りに練って誰がどのような形でも現実的には参入は困難という文言にした旨お聞きした」などと記載されている。
新たな獣医学部ができないように設けたのが「石破4条件」であり、それは獣医師の既得権益を守るための高いハードルだったのである。石破氏は日本獣医師連盟から政治献金も受けていたという話もあるが、献金を受けたからハードルを作ったとは思いたくはないが、この石破4条件で、全国獣医師連盟が安堵したことは間違いない事実だ。
石破氏は毎日新聞のインタビューで「特定の人に有利な政策や有利な条件を作ってはいけない」と述べたわけだが、天に唾するとはまさにこのようなことを言うのだろう。獣医師の既得権益を守るために動いたのが、石破氏なのである。