立憲・枝野代表の驚くべき無責任発言
立憲民主党の枝野代表が先ごろ、国民民主党と合流後の新党として次期衆院選で打ち出す家計支援策について、消費税減税も選択肢の一つとして明言した。立憲と国民の合流協議は、消費税減税をめぐり積極的な国民の玉木代表と否定的な枝野代表との調整がつかず、最終的に玉木代表ら国民側の一部は新党に合流しない結果となった。今回の枝野発言には、消費税減税を求める国民側の議員がより多く新党に参加するよう呼び掛ける狙いがあるとも伝えられているが、もしそうであれば政治家としての信念や政策などないに等しい無責任発言でしかない。
枝野氏は8月30日の民放BS番組で、家計への支援策として消費税減税など3案を検討中とした上で、消費税について「税率を下げることや、一時的にゼロにするのは一つの考え方だ」と強調した。
また、翌31日の記者会見では改めて「消費税について、税率を引き下げ、あるいはゼロ税率にするなどという形で、消費する際の税負担を軽くするということで、低所得の皆さんに対する配慮と、それから消費の喚起につながらないかというアプローチが1つ」と明言。
さらに「もう1つは、やはり消費のボリュームゾーンである中間層を特にターゲットにして、年収を1000万、これも課税所得なのか額面所得なのかということで変わってきますので、そこまで精査をしての発言ではありませんが、中間層ぐらいまでの所得税を、このコロナによる消費低迷状況の中では免除するというようなこと」などと述べている。
要するに枝野発言は、低所得者に配慮するため、消費税率の引き下げ、または税率ゼロとして、事実上停止するというのだ。そもそも、立憲民主党など野党は新型コロナ対策として政府がいったん打ち出した低所得者向けの30万円給付に反対したはずだ。それが今度は、低所得者支援として消費税減税、または停止をするというわけだ。もちろん、低所得者の消費税だけを減税することは不可能だ。だから、消費税減税は特に低所得者向けとは限らない。
さらに、消費喚起として考えるなら、政府が実施した10万円の特別定額給付金のような形式の方が効果的であることは間違いない。手元に現金が支給されるのと、商品の税込金額が安くなるのでは、現金支給の方が消費されやすいことは常識だ。
今回の特別定額給付金の事業費は12兆7,344億円。2020年度の消費税収は予算ベースで約22兆円だから、消費税率で言えば5%程度の減税を実施したのと同じなのだ。枝野氏がこんな基本的なことは理解していないとは言わないが、それでもあえて「消費税減税」を口にするのは、単なる人気取りでしかない。
さらに枝野氏の無責任さは、その減税の財源について言及しないことだ。もし消費税率をゼロにするなら、22兆円の財源を別途、手当てしなければならない。または、消費税の使途となっている社会保障や幼保無償化をやめることになるのだ。
もしそれを行政改革でねん出すると言うのであれば、まさにそれは、大失敗に終わった民主党政権の事業仕分けの再来となるのだろう。
(terracePRESS編集部)