1兆円突破した雇用調整助成金支給
新型コロナウイルス感染症対策の一環として政府が実施している雇用調整助成金の支給額が累計で1兆円を突破した。また政府は、新型コロナ対策で拡充している同助成金の特例措置について、現行の助成率や上限額のまま12月末まで延長する。メディアはこうした支援策の現実をほとんど伝えないが、支援制度は着実に利用されている。
雇用調整助成金は、事業活動が縮小し仕事がなくなった際に、労働者を休業させながら雇用を維持する企業に対し、休業手当の費用を支援する制度。「新型コロナウイルス感染症の影響」でも適用される。現在は、「緊急雇用安定助成金」の助成対象として学生アルバイトなど雇用保険被保険者以外の学生アルバイトらに対する休業手当も対象となっている。
4~9月までは、中小企業向けの助成率を最大100%とし、1日あたりの上限額を1万5千円に引き上げているが、こうした特例も延長するという。
売り上げが減った企業、事業者が同制度を活用し、労働者へ休業手当を払いながら雇用を維持することは、労働者の生活確保という視点で極めて重要だ。
民放テレビなどのニュース番組では、新型コロナの影響に直面している中小企業や小規模事業者の苦境を毎日のように報じている。特に飲食店などについては、弁当などの持ち帰りを新たに始めたり、デリバリーで新規顧客を開拓したりと、事業者が創意工夫で苦境に対して挑戦する姿を伝えている。
売り上げが急減した中でも、なんとか事業を継続させるという努力には、本当に頭が下がる思いだ。
こうした姿をメディアが伝えることは意味があるだろうが、残念ながら事業者が雇用調整助成金を利用しているか否かについては、ほとんど報じられないのだ。
しかし、雇用調整助成金の利用は確実に増加している。厚労省のまとめによると、8月28日時点で、累計申請件数は1,008,864件、累計の支給決定件数は866,232件となり、累計の支給決定額は1兆0914億5500万円となっている。
7月下旬からは、毎週1,000億円を超すぺ―スで支給が決定されており、累計支給決定額は着実に増加する見込みだ。
新型コロナをめぐっては、感染拡大防止と経済の両立を図ろうと苦慮している政府の対応について多くのメディアが、一方的な批判をしている色合いが濃いが、その裏では、政府の支援策が着実に利用されている現実がある。
だが、こうした情報は伝えられることがなかったり、報道されても読者、視聴者の目を引くような伝え方がされていなかったりしている。
メディアがこうした現実をきちんと報じれば、制度を活用しようという小規模事業者も出てくるはずだ。
(terracePRESS編集部)