充実する政府のワクチン情報の提供
通常国会の焦点の一つが新型コロナウイルス感染症予防のためのワクチンだ。国民には接種開始への期待感が高まっているが、国内流通などさまざまな課題があり「一つの大きなプロジェクト」(田村厚労相)になるほどのことだ。菅首相は国会で「手順や優先順位も国民に分かりやすく説明しながら準備する」と述べており、情報提供についても充実させる方針だ。
現在、日本が1億4400万回分の供給を受ける前提で契約した米ファイザー社のワクチンの場合、マイナス70度で保管しなければならない。いったん別の温度で保管すると有効期間がある程度限られてくる。このため、例えばある地域で100ロット、1000ロット使用する場合、スピード感を持って接種させていかなければならない。そのためのロジスティックはもちろん、それを実施する地方自治体、国民の協力態勢を作らないと円滑な接種は困難だ。
そのファイザーが厚労省にワクチンの承認申請をしたのは12月18日。米国など海外で行われた臨床試験データなどが提出されているが、日本の場合は、日本人のデータがないと承認されないため、他国より遅れ気味となっている。それでもファイザーからは1月中にも日本国内のデータが提供され、2月中に承認される見通しとなっている。
ところで、接種に向けての情報について厚労省はすでに比較的詳細な情報を提供している。例えば、接種の順位については①医療従事者等②高齢者(1957年4月1日以前に生まれた人など)③高齢者以外で基礎疾患がある人や高齢者施設などで従事している人―などとしている。
接種を受ける手続きについても、市町村から「接種券」と「新型コロナワクチン接種のお知らせ」が届き、近隣の医療機関や接種会場を電話やインターネットで予約することなどを示している。
また、強制ではなく、受ける人が同意した場合に限り接種することや、接種を受けた後に副反応が起きた場合の健康被害救済制度があることなども広報している。
国会では、ワクチンの供給量の確保やスケジュールばかりが議論のテーマになっている。供給量はこれまでの政府の取り組みで一定程度の確保は実現しているが、スケジュールについては不透明な部分が残っていることは事実だ。
しかし、米国などで接種が始まっているのは緊急使用許可で、条件付き承認だったりする。そうした中でのワクチン確保だから見通しが立たない部分があることも当然だ。
今後の課題は、確保ができた際に円滑に接種ができるような態勢整備だが、少なくとも国民向けへの情報提供は行われている。メディアは詳細な手続きなどは報じないため、情報に触れていない国民も多いかもしれないが、これからは情報の質だけでなく告知量も充実させる必要がある。
(terracePRESS編集部)