かさむ財政需要で大型予算が不可欠
政府の2022年度予算案の概算要求が、一般会計の総額で110兆円超となり、4年連続で過去最大を更新するという。社会保障費の伸び以外にも新型コロナウイルス感染症対策、災害対策などさまざま財政需要がかさんでいる。コロナ対策で経済は縮小しており、早急な経済対策も求められる。
昨年度からの新型コロナ対策により新規の国債発行が急増、国債の元本と利払いのための国債費も大きく増加している。コロナ対応などでは概算要求段階で金額を明示しない「事項要求」が多数含まれているが、22年度は本年度予算の概算要求額だった105兆4,071億円を大きく上回ることは確実だ。
例えば、国交省は「防災・減災、国土強靱化」や「グリーン化やデジタル化の推進など経済の好循環を加速・拡大」「分散型の国づくりを推進」などを柱に、本年度より18%増の6兆9,349億円を要求。ただし、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」や「盛土による災害の防止に向けた総点検を踏まえた対応」などは事項要求となっている。
具体的には「災害時における人流・物流の確保」に5,771 億円、「通学路の合同点検等を踏まえた交通安全対策の推進」に2,265 億円、「コンパクトで歩いて暮らせるゆとりとにぎわいのあるまちづくりの推進」に1,663 億円、「南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策等の推進」に2,028 億円などとなっている。
中でも、日本近海の海洋秩序が脅かされているため、海上保安庁分として本年度費14%増となる2,527億円を要求。法の支配に基づく自由で開かれた海上秩序を維持・強化するため、戦略的海上保安体制構築を目指す。
具体的には、尖閣諸島の領海警備体制の強化などの予算として337億円を計上。新たに3500トン型の大型巡視船3隻、千トン型1隻の計4隻を建造するため、計68億8千万円を盛り込んだ。今回の4隻を上積みし、25年度までに81隻体制を目指すという。
防衛省も5兆4,797億円を要求する見込みで、本年度から2.6%増となる。こちらも要求段階で金額を示さない「事項要求」も含まれ、最終的に過去最大となる見通し。岸防衛相は、中国など周辺国の軍備増強などを踏まえ「わが国の周辺の安全保障環境がこれまでにないスピードで変化し、厳しさを増している」と指摘している。
このように財政需要は増すばかりだが、国内経済は新型コロナ対策で停滞している。日本経済の潜在的な供給力と実際の需要の差を示す「需給ギャップ」は2021年4~6月期でマイナス4.0%、金額に換算すると年22兆円程度の需要不足が起きている。
この需給ギャップを埋めるためには、早急に新型コロナを収束に向かわせることは当然だが、年度後半に21年度予算が息切れすることがあれば本年度の補正予算が必要となることは確実。財政状況を踏まえながら、経済を支えるために来年度予算も大型で臨むことが求められる。
(terracePRESS編集部)