請求権協定や慰安婦合意にも反する慰安婦裁判
韓国のソウル中央地裁が21日、いわゆる元慰安婦ら20人が日本政府に総額30億ウォン(約2億9千万円)の賠償を求めた訴訟で、原告の訴えを認めず、請求を退けた。同地裁は1月に、別の訴訟で元慰安婦の請求に対して日本政府に賠償を命じた判決を出しており、今回はその1月判決とは異なった判断だった。菅政権は慰安婦裁判について「国際法違反」と主張しており、今回の判決も日本政府の主張と同様の判断をした形となった。
菅首相は1月判決の直後に「国際法上、主権国家は他国の裁判権には服さない。そういう中でこの訴訟は却下されるべきと考える。日韓の慰安婦問題については、1965年の日韓請求権協定において、完全かつ最終的に解決済みである。だから、韓国政府として国際法上違反を是正する措置を採ることを強く求めたい。我が国としては、このような判決が出されることは、断じて受け入れることはできない」などと、日本政府として容認しないことを明確に示していた。
国際法では、主権国家は他国の裁判権に服さないという「主権免除」の原則があるが、ソウル中央地裁の1月判決はこの原則を適用しないという手法で、原告の勝訴とし、今回の判決では逆にこの原則を適用し、原告の敗訴としたわけだ。
また、ソウル中央地裁は先ごろ、1月判決に関連し、訴訟費用確保のための日本政府資産の差し押さえについて「国際法に違反する恐れがある」と、差し押さえを認めない決定をしているが、これも「主権免除」の原則を適用したものだ。
しかし、今回の判決について原告側は反発し、控訴する見通しとなっており、控訴審で「主権免除」の原則が適用されるか否かは不明だし、韓国司法全体が慰安婦らによる日本政府に対する賠償請求の不法性を認めた訳ではないだろう。
菅首相の談話にもあったように、この裁判は「主権免除」の原則問題に加え、1965年の日韓請求権協定が第2条で日韓間の請求権について「完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」としていることや、2015年12月のいわゆる日韓両国の慰安婦合意にも反するなど、正当性は認められない。
この合意では、慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」としたにもかかわらず、韓国政府は、日本政府が10億円を拠出して設立した「和解・癒やし財団」を一方的に解散させるなど、韓国政府が信頼を裏切る行為を一方的に行ってもいる。
慰安婦裁判で日本政府への賠償請求が棄却されても、慰安婦をめぐる日韓間の問題が解決された訳ではない。少女像は依然として撤去されていないし、そればかりか、韓国の鄭外相自らが、2015年の慰安婦合意について「日本政府は、韓国が合意を守らず国際法違反だと理屈に合わない主張を続けている。日本にそのような資格があるのか。問題の根本はどこにあるのか」などと述べ、現在でも日本政府を強く批判しているのだ。
慰安婦をめぐる日韓間の問題を解決するためには、韓国政府が、両国の問題を最終的に解決した日韓請求権協定や慰安婦合意の取り決めに立ち戻らなければならず、それが唯一の解決策だ。
(terracePRESS編集部)