食育の普及により健康で心豊かな社会構築を
農水省は先ごろ、「第4次食育推進基本計画」を決定した。今回の計画は「生涯を通じた心身の健康を支える食育の推進」「持続可能な食を支える食育の推進」「『新たな日常』やデジタル化に対応した食育の推進」の3項目に重点を置き、食育推進の目標として16の目標と24の目標値を盛り込んだ。食をめぐる環境が大きく変化している中で、健康で心豊かな生活を送れる社会を構築するため、食育を国民運動として発展させることが求められている。
高齢化が進行する中で、健康寿命が伸びたり、生活習慣病の予防が国民的課題になったりする中で、栄養バランスに配慮した食生活の重要性が増している。
一方、世帯構造が変わったり、中食市場が拡大したりするなど、食に関する国民の価値観や暮らしのあり方が多様化し、健全な食生活を送ることが難しくもなっている。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、テレワークの増加や出張機会の減少などで農林水産業や食品産業に様々な影響を与えた一方、家族で食を考える機会が増えることで、食を見つめ直す契機ともなった。
事実、農水省の調査では、新型コロナの拡大前に比べて食生活が変化したことについて、「自宅で食事を食べる回数が増えた」としたのは35.5%と最も多く、次いで「自宅で料理を作る回数が増えた」が26.5%となり、食生活の変化が顕在化した。
食育推進基本計画は、食育基本法に基づき、食育の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、基本的な方針や食育推進の目標などを定めるもので、5年ごとに作成している。
第4次食育推進基本計画では、「食育に関心を持っている国民の割合」を現状(20年度)の83.2%から25年度までに90%以上にすることや、「朝食または夕食を家族と一緒に食べる『共食』の回数 」を現状の週9.6回から25年度までに週11回以上へ、「生活習慣病の予防や改善のために、ふだんから適正体重の維持や減塩等に気をつけた食生活を実践する国民の割合」を20年度の64.3%から25年度までに75%以上に増やすなど新たな目標を設定した。
また、新たに盛り込んだ目標も多く、例えば「学校給食における地場産物を活用した取組等を増やす」との目標も掲げた。具体的には「学校給食における地場産物を使用する割合(金額ベース)を現状値(19年度)から維持・向上した都道府県の割合」を25年度までに90%以上とするとしている。
さらに、郷土料理や伝統料理を月1回以上食べている国民の割合を現状(20年度) の44.6%から25年度までに50%以上に引き上げ、伝統的な料理や作法などが継承される社会を構築する。
食育は、個人の食生活に関わる問題であり、だからこそ子供から高齢者に至るまで、国民一人一人の理解と実践が不可欠となる。その一方で、国や地方公共団体、教育、保育、社会福祉、医療、農林漁業者、食品業界、ボランティアなど官民のさまざまな団体、人々が携わっており、そうした団体などが連携して、多様な手段を通じた積極的な情報提供が求められる。
(terracePRESS編集部)