対中政策も語れない野党党首の意味
自民党の石破元幹事長が自身のブログで9日の党首討論について、立憲民主党の枝野代表が、米中関係に触れなかったことについて「政権を担う意欲を語る枝野代表から見識を聞いてみたかったと残念な思いがした」と振り返った。新型コロナウイルス感染症についての質疑であれば、これまでの国会質疑でも散々やっていたこと。政権を担うといいながら米中関係、日中関係のような重要なテーマには関心がないようだ。
党首討論で枝野氏の発言は、新型コロナウイルス感染症対策、非常事態宣言など政府の対応、東京オリンピック・パラリンピック、感染対策に伴う補正予算編成と国会の延長、新型コロナの危機管理体制などすべてが内政問題だ。
新型コロナは現在も亡くなる方が出ている大きな問題であることは間違いないが、やがてワクチンも普及し、時期は別として、収束する方向になることは間違いない。その一方、日本を取り巻く状況は課題が山積しているのだ。
中国はやがて世界一の経済大国になることは確実で、これまでの経済成長に伴って軍事力を急激に拡大している。特に南シナ海、東シナ海への影響力をますます伸展させており、尖閣諸島周辺海域では中国公船の活動が活発化している。こうした中国の行動により、日本の安全保障が脅かされる可能性も否定できない。
現在、日米豪印の4カ国が、国際海洋秩序の維持のために連携を強化しているのも、こうした中国への対抗措置だ。英国やフランスも中国の行動に懸念を示している。今後、中国と西側諸国の競争が激化することは避けられないとの見方も強い。
また、国内に目を転じると、少子高齢化が進展する中で、経済成長をどう確保するのか、地域社会をどう維持していくのかということも重要な課題だ。また、グリーン社会の構築も重要課題だ。
こうした問題は、慢性病のようなもので、日々の変化は乏しいが、だからといって目を背けていれば、取り返しの付かないことになる。
枝野氏は11日、日本外国特派員協会で記者会見し、新著「枝野ビジョン 支え合う日本」(文春新書)に関し「バイデン米大統領の(1月の)就任演説を読み、私がずっと言ってきてこの本にも書いたこととほぼ同じ方向性を言っている。時代が私に追いついていただいたと喜んでいる」と自賛している。
そのバイデン大統領は、トランプ前大統領と同様、厳しい対中政策を継続しているのだが、枝野氏自身は対中政策については知らんふりだ。
枝野氏は会見で、G7が今月上旬の財務相・中央銀行総裁会合で、法人税の国際的な最低税率について合意したことを指摘し、「このことが象徴的に表しているが、世界が私が本で書いた方向に明確に転換を始めている。日本もそれに遅れてはいけない」と強調している。
しかし、財務相会合で合意したのは最低税率を15%に設定することであり、日本はもともと遙かに高い税率となっている。「日本は遅れてはいけない」などと言っても、日本は税率引き下げ競争に慎重に対応しているのだ。
枝野氏は「政権を担う」と言うが、有権者の受け狙いだけで、まともな政策も掲げていない。
(terracePRESS編集部)