ウクライナ情勢から何を学ぶか
ロシアがウクライナとの国境に軍隊を大規模に駐留させるなどウクライナ情勢が緊迫している。日本から遠い欧州の出来事だが、決して他人事ではいられない。国内には国際的な紛争について、すべて外交で解決できると主張する政党もあるが、外交は安全保障の一部分。ウクライナ情勢で、欧米各国とロシアがそれぞれ硬軟織り混ぜた外交と軍事活動を展開していることをみれば、間違いは明らかだ。
ウクライナは旧ソ連の一部地域だったが、ソ連崩壊後ウクライナとして独立した。国内では親欧米派とロシア派に国民が分かれ、混乱状態が発生。その混乱のなかの2014年3月にロシア軍が「ロシア系住民の保護」を名目にクリミア半島に侵攻し、ウクライナの領土だったクリミア半島を併合した。
そして今回は、ウクライナ国境周辺に10万人を超える規模の部隊を配備しているとされている。米国のバイデン大統領は1月27日にウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話で協議したが、その中でバイデン氏は、ロシアが来月ウクライナに侵攻する「確かな可能性」があると警告するなど緊迫した情勢となっている。専門家の中からは、北京オリンピック終了後が1つの節目になるとの見方も出ているほどだ。
一方、北大西洋条約機構(NATO)は、ロシアによるウクライナ侵攻に備え、東欧の防衛力を増強するため、加盟各国が戦闘機や軍艦、部隊の派遣を進めているが、その一方で、ロシア軍が侵攻した場合でもNATOはウクライナに軍を派遣しない方針も示している。
現状で言えば、ロシアは欧米に対しNATOがウクライナなど旧ソ連諸国に拡大しないことの法的保証を求めているが、それに対し米国は「NATOの門戸は開放されている」と拒否する姿勢を明確にした回答をしている。ロシア側は米国の回答を受け入れられないとしているが、両国は現在、外交交渉を行っている。
こうしたウクライナ情勢をめぐってロシアもNATOもそれぞれが軍事力を背景に交渉している。ロシアの国境付近の軍事増強に対してはNATOも東欧防衛強化の構えをみせている。その一方で、米国をはじめとする欧米各国は外交交渉を重ね、ロシアのウクライナ侵攻阻止を図る努力をしている。それはロシア側からみても同様だ。国境沿いの軍事力強化を図りながら、一方で外交交渉によってNATOの東方拡大を阻止したい考えだ。
このように外交と軍事力を複合的に、硬軟織り交ぜるのが安全保障だ。軍事力、日本の場合は「抑止力」だが、自衛力を強化する一方で、何か問題があれば外交的な解決を図る。しかし、軍事的な抑止力がなければ、外交も通用しない。これが国際社会の現実だ。
アジア情勢が緊迫する中で、立憲民主党や共産党などは自衛力の強化を批判しているが、自衛力がなければ日本の国益は守れない。
(terracePRESS編集部)