アクセル、ブレーキを使い分けるコロナ対策
政府は新型コロナウイルス感染症対策の「まん延防止等重点措置」について、感染状況が落ち着いてきた地域を解除した。解除したのは20日に期限を迎えた21道府県のうちの山形、島根、山口、大分、沖縄の5県であった。今後は感染状況を注視しながら、可能な限り残る地域の解除も求められる。
今回の解除が見送られた北海道、大阪府など残る16道府県と、27日が期限の和歌山県については、すでに延長されている東京都、愛知県などと同じ3月6日まで延長する。
政府が一部解除を決めたのは、足元で全国的にオミクロン株の感染拡大のペースが落ち着き始めていることが背景にある。36都道府県で、速度は遅いものの感染者数が減少に転じていることが背景にある。
そのため岸田首相は「コロナ対策の基本姿勢、慎重さは堅持しながら、同時に、第6波の出口に向かって徐々に歩み始める。すなわち、次のフェーズへと段階的に準備を進めていくべきだ」と判断したという。
また、第5波当時と比べて医療体制が強化されていることも要因だ。受入病床は第5波のピーク時に比べて全国では1.3倍、東京では臨時の医療施設を含め、1.8倍の受入余力を確保している。
さらに、治療薬が確保されているという要因もある。政府はすでにメルク社の飲み薬「モルヌピラビル」を全国の医療機関、薬局に13万回分を配置し、これまでに5万8000人に投与されている。
軽症・中等症患者向けの点滴薬「ゼビュディ」などウイルスの増殖を防ぐ中和抗体薬も、今年に入ってから6万6000人に投与されている。これに加えて、レムデシビルも軽症者治療の選択肢に加わっているほか、10日には、「モルヌピラビル」に次ぐ飲み薬としてファイザーの「パキロビッド」も承認されており、多様な治療方法が確立しつつある。
こうした結果、感染者数は昨年夏の約4倍となっているが、入院待ち患者があふれた昨年夏と違い、重症病床は十分に余力があり、必要な医療の提供も実現している。
以上のような状況を背景に、政府は5県の「まん延防止等重点措置」を解除したわけだが、岸田首相のいう「次のフェーズ」へ進むための方策として、首相は「今後、延長した地域についても状況をしっかり把握していく、その中で、地元ともよく話し合いながら解除ができるという結論に至ったら、3月6日を待たずに解除するということもあり得ると、一般論としては思っている」と説明している。
その一方で、感染症がどのように変化するかは予測がつかない部分が多い。事実、既存のオミクロン株が亜種で、感染力がさらに強いと言われているBA.2に置き換わり、感染状況が再び悪化する可能性もある。
首相はそうした点について「感染状況に悪化の兆しがあった場合には、即座に対応を見直す。他方、第6波の出口がよりはっきり見えてくれば、経済社会活動の回復に向けてさらなる取組を進めてまいる」と表明しており、ブレーキとアクセルを使い分けながら、コロナ対策と経済の両立を図っていく。
(terracePRESS編集部)