追い込まれる立憲民主党
新型コロナウイルス感染症やロシアによるウクライナ侵攻という国際的な出来事が続く中で、日本の政治も地殻変動の兆しが出ている。国民民主党と自民、公明の政権与党の距離が縮まる一方で、労働組合の連合の方針により立憲民主党と共産党の距離が開きつつある。夏の参院選を前に、立憲民主党が追い込まれつつある。
政府は、原油価格の高騰への対策を進めている。具体的には燃油価格の激変緩和のため、現在5円を上限としている補助金の支給上限を最大25円に大幅拡充し、直近の小売価格からの上昇分を補助することで急激な石油製品の価格上昇を抑制する。
さらに、漁業や施設園芸に対する重油価格高騰分の補填を拡充するほか、タクシー事業者に対するLPガス価格高騰分の補填を、激変緩和事業なみに行うほか、地方自治体を通じて灯油購入支援や暖房費支援など、国民生活への影響を抑制する。
国民民主党はさらに、ガソリン税を減税できる「トリガー条項」の発動を求めており、4日には玉木代表が岸田首相、公明党の山口代表とそれぞれ会談している。双方の考えには隔たりはあるが、与野党のトップが政策協議を行うのは異例だ。
こうした状況の中で立憲民主党の泉代表は5日、国民民主について「与党という枠組みになられた、と受け止めている」と述べている。
もちろん、国民民主党が与党になったわけではないし、トリガー条項の凍結を解除し、発動すれば地方自治体の税収が約5000億円も減少すると試算されているので、国民民主党の要望通り、容易に発動できるものではない。
岸田首相も3日の会見で質問に対して「トリガー条項の凍結解除、この問題についても何が実効的なのか、効果があるのか、こういった点も考えながら考えていくということだと思う。その運用の仕方などさまざまな点も含めて、さまざまな選択肢の中で考えていきたいと思う」と述べるにとどまり、明確な方向性は示していない。
こうした状況の中で「与党という枠組みになられた」との泉代表の発言は、国民民主党への〝怒り〟を示したものなのだろう。
もちろん、論理的にはおかしくなるが、衆院で政府予算案に賛成した国民民主党が、参院で反対に回ることはあり得ないことではない。「政府がトリガー条項の発動に応じないから反対する」と〝言い訳〟をする可能性もある。しかし、そうだとしても、それは国民民主党の〝限界〟というものだろう。現実的な政策を考えられないという野党の限界だ。
それは措くとして、追い込まれているのは立憲民主党だ。連合からは共産党との関係について釘を刺され、その共産党からは見切りをつけられつつある。各メディアの世論調査によると政党支持率は一向に高まらず、情報発信力も乏しい。政策を提案するといっても、出てくる政策は現実を見据えたものではない。
夏の参院選での野党の連携がどうなるかはまだ見えていないが、いずれの政党も国民の信頼に応えられる政党とはいえないだろう。
(terracePRESS編集部)