自由貿易の重要性掲げ成功したG20
日本が初めての議長国を務めたG20首脳会議は、自由貿易の実現などを盛り込んだ首脳宣言を採択して閉幕した。安倍首相は、中国や米国、フランス、インドなど14カ国・機関との首脳会談を行い、このほか5回の立ち話や夕食会などもしている。外交に強い安倍首相だからこそ、ここまで精力的な外交ができたのだろうし、その結果、日本の国際的ポジションがさらに強化されたことは間違いない。
特に「G20 大阪首脳宣言」では「我々は、自由、公平、無差別で透明性があり予測可能な安定した貿易及び投資環境を実現し、我々の市場を開放的に保つよう努力する」との文言を盛り込むことで自由貿易の原則を明記している。
「反保護主義」という言葉が盛り込まれなかった点を過剰にクローズアップしているが、現在の米中関係は、互いが自由貿易の原則から逸脱していると批判しあっている側面が強く、だからこそ、自由貿易の原則を明記したことは極めて意義深い。
安倍首相は閉幕後の記者会見で「自由貿易体制の揺らぎへの懸念が出ている」としたうえで、大阪宣言について「自由貿易の基本原則を明確に確認できた」「対立を際立たせるのではなく、共通点に光を当てることに力を入れた」など述べているが、これはその通りだろう。
「自由」「公平」「無差別」「透明性」「予測可能」「安定」との自由貿易を象徴する6つの言葉を盛り込むことにも米国は反対したと伝えられているが、それを押し返したのは、議長を務めた安倍首相のリーダーシップに負うところが強かったはずだ。
そしてこうした日本の姿勢が、一歩間違えればさらなるエスカレートもあり得た米中間の貿易摩擦を回避し、米中が協議再開で合意したことに結び付いたのだろう。米中間の貿易摩擦はG20参加国の大きな懸念材料になっていたが、G20が反保護主義の姿勢を示したことが、両国の背中を押したのだ。
首脳宣言は、閉会まで約3時間の時点で安倍首相が各国首脳に対し「とりまとめを事務方に指示してほしい」と呼びかけ、閉幕直前にまとまったものだ。そうした議長の努力については国民がなかなか知ることができないが、そうしたリーダーシップの発揮があったことは間違いない。
これまで日本には多くの首相がいたが、ここまで他の国々の首脳から信頼され、日本の国際的地位を高めた首相はいなかっただろう。
アジア情勢などが急速に変化している中で、日本の首相の資質として外交力が問われる時代になっていることは間違いない。外交にうとい政治家は、もはや日本の首相を務めることはできない。
米中が反目する中で、自由貿易の原則を明記した首脳宣言をまとめた安倍首相のリーダーシップは素直に認めるべきものだ。
(terracePRESS編集部)