高齢者が自分の都合に合わせて働ける社会
内閣府が先ごろ公表した2019年度の年次経済財政報告(経済財政白書)は、景気回復とともに雇用情勢が大きく改善していることを振り返っている。
白書によると、求職者数に対してどの程度求人があるかを示す指標である有効求人倍率は、2013年以降上昇傾向が続いていたが、2019年には1.6倍台と高い水準となっている。
白書はその理由について「景気の回復が続き、企業の採用意欲が高まり有効求人数が大きく増加していることに加え、失業者数が大きく減少し、職を探す人が減少しているため」としている。1人の求職者に1.6件の求人があるわけだから、働く側から見れば雇用情勢は極めて良好だ。逆に言えば、企業によって人で不足感が強まっていることになる。
さて、雇用情勢が改善していると言うと、野党などからは「非正規雇用が増えている」と、さも問題視するような批判が出されている。参院選でも、立憲民主党が「アベノミクス6年の実態」として「新規雇用の7割(304万人)が非正規」などと強調していた。
では、実際はどうなのか。確かに非正規雇用は2012年から2018年までに300万人以上増えている。正規雇用の倍以上の増加だ。
しかし、この非正規雇用の増加は一概に問題視するものでもない。白書はこの点について「雇用形態別に2012 年からの雇用者数の増加幅をみると、15 歳から64 歳の男女では正規雇用と非正規雇用の増加幅はほぼ同水準であるのに対し、65歳以上をみると、正規雇用が30 万人増えたのに対して非正規雇用は179万人増加しており、65歳以上の雇用者の増加の多くは非正規雇用となっている」と指摘。
さらに、65 歳以上の雇用者非正規雇用については「(その理由を聞くと)『自分の都合のよい時間に働きたいから』との回答が全体の3分の1を占めており、2013年に比べてもその回答の割合が上昇している」というのだ。
つまり、非正規雇用の増加は65歳以上に負うところが多く、それは自分の都合に合わせて働けるからで「65 歳以上で正規雇用よりも非正規雇用が大きく増えている要因は、正規の仕事がないためというよりも、健康寿命が延び、肉体的、精神的にも働く能力、意欲がある高齢者が増える中、自分の都合にあわせて働き方ができる非正規雇用を選んでいることが大きな要因となっていると考えられる」という。
「非正規雇用の増加」を目の敵にするのはいいが、アベノミクスによるこれまでの景気回復で雇用状況が大きく改善し、さらに高齢者も自分の都合に合わせて働くことができる環境となったとことにこそ目を向けるべきだろう。
(terracePRESS編集部)