住民税非課税世帯への5万円給付の意味
政府は、物価高騰対策の一環として低所得者(住民税非課税世帯)への5万円給付を実施する。しかし、一部メディアなどからは「低所得者だけで不公平だ」「経済効果が限定的で意味がない」「減税すべき」などといった〝国民〟の声が紹介されている。しかし、ほとんどが誤解に基づくものであり、低所得者にとって不合理な状況を作り出している。
今回の給付する5万円は「電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金」で、対象は「住民税非課税世帯」。「住民税非課税世帯」は ①生活保護(生活扶助)を受けている ②障害者、未成年者、寡婦、ひとり親の人で、前年の所得が135万円以下(給与所得であれば204.4万円未満)③前年の所得が自治体ごとの基準より少ない、のいずれかに該当する世帯とされている。
世帯だから、世帯の構成員全員が住民税非課税になっている必要があり、例えば、給与所得者の夫とパートタイマーの妻、子ども2人の世帯の場合は夫婦の年収合計が355万円以下程度と考えられる。
対象世帯数は約1600万世帯とされていて、現在日本の世帯は約5800万世帯だから、日本の世帯の約27%に支給されることになる。
では、なぜ5万円なのか。今回の5万円は「電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金」だ。低所得世帯の電力やガス、食料などの価格高騰相当分は毎月約5000円とみられている。半年だと、3万円程度の出費増があるわけだが、価格高騰相当分を根拠にして、その3万円を上回る5万円を支給しようというものだ。
だから、これによって経済効果を期待し、景気を上向きにしようというものではない。もちろん、財政支出が9000億円程度必要とされているから、その分の効果はあるだろうが、景気てこ入れのために実施するのではなく、あくまでも低所得者の生活を支援しようというものだ。
今回の物価高騰ではガソリン価格の高騰が一時期話題になった。政府が石油メーカーに補助金を出すことによって、現在本来であれば200円程度になると考えられるガソリン価格は、170円程度に抑制されている。ほとんどの人は実感していないだろうが、ガソリンスタンドで満タンにするため1回50リットルを給油すれば、1500円の補助金をもらっているのと同じだ。
もちろん、輸入小麦などの価格も抑えられており、実は、多くの国民が物価対策の恩恵を受けているのだ。
直接的な国民への給付金などを大規模にするよりも、政府は商品の価格が高騰しないようさまざま対策を実施している。「低所得者ばかり優遇される」といった声があるが、すでに多くの生活者が恩恵を受けているのだ。
減税を求める声もあるが、例えば所得税減税を実施した場合、その恩恵は低所得者には届きにくい。「だから消費税を減税すべき」との声もあるだろうが、物価対策と同時に日本は将来のために財政再建も不可欠となっている。
住民税非課税世帯への5万円給付は個人消費を2250億円押し上げるといった試算もあるが、まずは低所得者の人々が生活に困窮しないような対策を行い、安心して社会生活を送ってもらうことが重要だ。
(terracePRESS編集部)