10兆円の大型家計減税で有権者を吊り上げる無責任さ
国民民主党が先ごろ党大会を開催して、次期総選挙をにらんで「10兆円規模の家計減税」を打ち出した。10兆円規模であれば、消費税なら4~5%の減税となり、現行10%消費税率を5%に戻すということだ。
総選挙を念頭に大型減税を打ち出せば、有権者の支持を得られやすいことは間違いないが、それで責任ある政治ができるのだろうか。
コロナウイルスによる新型肺炎対策は別として、今の日本には多くの課題が山積している。デフレからの脱却、経済の活性化、財政再建、災害対策、未来に向けた社会環境整備、安全保障など挙げればきりがないほどだ。問題は、そのバランスを取りながら政策は決めていかなければならず、その視点で実行するのが責任ある政党ということだろう。
国民民主党の玉木代表は「企業減税ではなく、家計セクターの減税をやりたい。大きくやり方は2つで、1つは所得税減税。もう1つは消費税減税。9兆円から10兆円規模の大規模な家計減税が必要だ。所得税、消費税などどの税目でやるのかということを詰めていきたい」などと語り、大規模減税を掲げることに強い意欲を示している。
ちなみに、消費税についていえば、山本太郎氏が率いる「れいわ新選組」は廃止を政策としているほか、5%への減税を総選挙での野党共闘の条件としている。
いずれにしても、国民民主党という野党の大きな勢力が大型減税を打ち出すのは、選挙対策としてみれば当然といえば当然なのだが、責任ある政党ということを考えればあまりにも無責任だ。
その無責任ぶりは、玉木代表が減税のための財源を語っていないことでも明らかだ。野党として減税を振りかざすことは簡単なのだが、実際は減税で減少する税収の代替財源を手当てしなければならない。
例えば、今回の消費税増税の税収で幼保無償化が行われているが、その財源をどこで手当てするのか。財政再建に回している部分がなくなれば、財政再建が遅れるのだ。
もし、法人税増税を代替財源にするなら、それが企業経営の足を引っ張り、設備投資の減少や労働分配への悪影響などの可能性も出てくる。結局のところ、家計に跳ね返ってくることもあり得るのだ。
国債を代替財源にするということも論理的にはあり得るが、それが財政再建を直撃することは間違いないし、「行政の無駄を省く」という有権者に聞こえの良い手法は、民主党政権の失敗をみれば、大きな財源にはなりえないことは証明されている。
社会保障費、防衛費、農林水産予算など、各省予算を削減して捻出するということになれば、それぞれの政策に大きな影響がでることは避けられない。
代替財源も明示しないまま大型減税を掲げるのは、甘い蜜で有権者を吊り上げるという行為、無責任な政治と同じだ。
(terracePRESS編集部)