有権者の不安を煽る補選候補者でいいのか
新型コロナウイルス感染症の拡大防止と影響を受ける事業者や国民への対策については、意図的か否かに関わらず無理解や誤解が横行している。
PCR検査の拡大の必要性について口角泡を飛ばして主張していたテレビのあるコメンテーターが、数日後に突如「PCR検査をしたほうがいいとか、しないほうがいいとか、そんな話は終わった話」「医療崩壊を起こさないことが大事」と言い放ったケースもある。
最も重要なことが「PCR検査の拡大」と言っていたはずが、それは「終わった話」で、今度は「医療崩壊」だ、という訳だ。無責任に、ただ国民の不安を煽っているだけというしかない。
こうした無責任さはテレビのコメンテーターだけではない。野党などは政府批判をするためだけに、現在行われている感染防止対策をあげつらっている。
例えば、4月26日には衆院静岡4区補選が行われるが、野党候補となる田中けん氏も、選挙目当てのためか、無責任な主張をしている。
3月23日の辻立ちで、前日に、政府や埼玉県が開催の自粛を求めていたキックボクシング団体「K-1」の大会が開催されたことを取り上げ、「しっかりと基準を定め、補償を行政がしていく。そのセットでなければ、今回のイベントも中止をするという決断ができなかったわけだ」と指摘している。さらに「今こそ政府が補償をどうするかということを早く議論していかないと、これをいつまでも民間・現場任せにしていると倒産してしまう、成り立たなくなってしまう会社が数多く生まれてしまうと思う。早く、この対策と、またその決断を政府に求める」などと主張した。
K-1の大会は6500人もの観客を集めた、まさに大規模イベントなのだ。政府の専門家会議は19日に出した提言で、大規模イベントについて「引き続き、全国的な大規模イベント等については、主催者がリスクを判断して慎重な対応が求められる」との見解を示しているとおり、依然として大規模イベントのリスクは高い。
企業には社会的責任を負う必要があるはずだが、K-1は、その社会的責任を果たすことなく、イベントを強行したわけだ。しかし、田中氏はそんなことはおくびにも出さず、政府が補償しないから開催されたと言い放ったわけだ。
また、「成り立たなくなってしまう会社が数多く生まれてしまう」というのは中小企業経営への懸念だろう。K-1のような大規模イベントから中小企業対策とどのようにつながるのか分からないが、確かに経営が悪化している中小企業があることは間違いないだろう。
しかし、政府は緊急対策の第2弾ですでに、中小・小規模事業者を中心に、日本政策金融公庫などによる総額1.6兆円規模の金融措置をとっている。また、人や物の動きが停滞することなどで事業活動の縮小を余儀なくされている事業者もいるが、雇用が維持され、国民生活の安定が保たれるよう、雇用調整助成金の特例措置も拡大されている。
もちろん、現在策定している経済対策でも、企業向け支援策が盛り込まれるのだろうが、すでに様々な支援策も設けられているのだ。
田中氏は、それを知ってか知らずか、それは分からないが「早くしないと倒産企業が続出する」と言わんばかりに、国民の不安を煽っているわけだ。
国会議員になろうというものなら、国民の不安を煽るために演説するのではなく、せめて「資金繰りに悩んでいる事業者は中小企業関連団体や政府系金融機関などに相談窓口があり、そこで資金繰りなどの相談に応じている」などと有権者に知らせるべきだろう。
(terracePRESS編集部)