独善的、支離滅裂の社説でいいのか?
新型コロナウイルス感染症対策のための緊急事態宣言の延長が決まったことを受け、朝日新聞は5日付け朝刊に「緊急事態延長 長丁場想定し戦略描け」と題した社説を掲載した。政府が戦略すら持っていないことを前提にし、相変わらずの独善的でフェイク、支離滅裂ともいえる社説だ。
社説では冒頭から「政府は、すべての都道府県を対象とする緊急事態宣言を、今月末まで延長すると決めた。感染が抑えられている地域では行動制限の一部緩和や期限前の宣言解除も検討するというが、市民の自由と権利が制約される状況はなお続くことになった」と述べている。
朝日新聞が訴えたいのは、この一文の末尾の「市民の自由と権利が制約される状況はなお続くことになった」だろう。あたかも政府が恣意的に「市民の自由と権利を制約」しているような印象を与えるが、緊急事態宣言の延長は「市民の命と健康を守る」ためのものだ。「命と健康を守る」ための「自由と権利の制約」だ。その視点を意図的に欠落させている。
社説はその後、PCR検査が増えていないことに触れ、「感染の全体像を把握しているわけではないことは、政府の専門家会議も認める。これでは出口戦略の描きようがなく、政府への不信を拭うこともできない」と指摘している。
PCR検査が増えていないことは確かだが、そのことと出口戦略は直接的には結び付かない。出口を決めるのは新規感染者数だったり、PCR 等検査陽性率、感染者1人から平均何人に移るかを示す実効再生産数、感染経路不明の感染者数の割合だったりするだろう。感染の全体像は、そのようなことから判断するのだ。
社説は、PCR検査が増えないことをことさら強調しながら、「政府が出口戦略を描けない」と政府不信を煽っているのだ。
また驚くべきは「補正予算に医療支援のための交付金1490億円が計上されたが、不足を指摘する声は強い。医療が崩壊すれば社会の再生は望めない。早め早めに次の対策を講じる必要がある」との一文だ。
確かに、補正予算に計上された「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」は1490億円で間違いない。この交付金は入院患者を受け入れる病床の確保や消毒などの支援、医療機関での人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)、個人防護具などの整備を促進するためのものだ。
しかし、朝日新聞が指摘している「1490億円」は国の負担分だけであり、地方負担分を含めれば全体では2,972億円となる。
それだけではない。補正予算ではこのほか、「人工呼吸器の確保」に265億円、「重傷者増加に備えた医療機関の人材確保」に4.3億円などさまざまな支援策がある。厚労省ベースであれば「感染拡大防止策」「医療提供体制の整備」「治療薬の開発」の3分野で計6695億円となっているのだ。
つまり社説はここでも「1490億円」という交付金の国費分だけを抜きだし、そのほかの事実は目を瞑り「政府の対応が後手に回っている!」と声高に叫んでいるに過ぎないのだ。
さらに言えば、社説は「感染の拡大と縮小、行動制限の強化と緩和が、当分の間繰り返されそうなことが、はっきりしてきている」などと論じている。しかし、それは今後の取り組みによって変わってくるはずなのだ。
だからこそ、専門家会議が「新しい生活様式」を示したわけだが、それについても社説は「新規感染者が限定的になった地域向けのものだというが、多くの人が『今は緊急事態だから』と受け入れている制約や留意事項がそのまま盛り込まれた。政権が掲げる『V字回復』の難しさを物語る内容だ」と断じている。
新しい生活様式は、決して厳しい〝ステイホーム〟を求めたものではないし、各業種に営業の自粛を求めたものでもない。業界ごとの工夫を求めたのだ。そのうえで、第2派、第3波を招かないために、このような生活をしようという指針だ。
社説は、第2派、第3波が来ると言いながら、その一方で新しい生活様式が厳しいと言い、だからこそ経済の「V字回復」が難しいと断じているわけだ。ここまで来るともはや「支離滅裂」というほかはない。
結局、朝日新聞は「やることなすことダメだ!」と無責任で、事実を歪曲した社説で政府批判を煽りたいだけなのだ。
(terracePRESS編集部)