2050年脱炭素で動き出した2兆円基金
菅政権の最重要課題である2050年カーボンニュートラルの目標達成に向けた柱の一つである2兆円の「グリーンイノベーション基金」の基本方針が先ごろ、策定された。今後、これまで以上に野心的なイノベーションを生み出すため、企業支援を展開する。
2050年カーボンニュートラルは決して容易な取り組みではないが、「経済と環境の好循環」につなげるための産業政策として、日本の未来を担うものとなる。
菅首相が2020年10月、「2050年カーボンニュートラル」を宣言したことに伴い、政府はその実現に向け走り出しており、すでに「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」も策定している。
戦略は「温暖化への対応を、経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも、成長の機会と捉える時代に突入」したとの問題意識の基で、政府は、あらゆる政策を総動員する一方で、大胆な投資をし、イノベーションを起こすといった民間企業の前向きな挑戦を全力で応援するとの方針を表明している。
その支援策の柱が、「グリーンイノベーション基金」で、具体的には国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に2兆円の基金を造成し、官民で野心的かつ具体的な目標を共有し、これに経営課題として取り組む企業等に対して、10年間、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援するという。
基本方針などによると、支援対象になるのは、蓄電池、洋上風力、次世代太陽電池、水素、カーボンリサイクルなどグリーン成長戦略で実行計画を策定している重点分野で、これまでの研究開発プロジェクトの平均規模(200億円)以上を目安とする一方、大企業だけでなく、中小・ベンチャー企業の参画を促進したり、大学・研究機関の参画も想定したりしている。もちろん、国が委託するに足る革新的・基盤的な研究開発要素を含むことが必要となる。
政府は、この2兆円の基金を呼び水として、約15兆円に達する民間企業の研究開発・設備投資を誘発し、野心的なイノベーションへ向かわせるほか、世界のESG資金約3,000兆円も呼び込み、日本の将来の所得・雇用の創出につなげたい考えだ。
デジタル関連で、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みの遅れが懸念されているように、日本の産業界には、これまでのビジネスモデルや戦略を根本的に変えていくことが不可欠な企業が数多く存在しているのも事実だ。
グリーン成長戦略は、こうした日本の産業界の変革を求めるものだ。
政府はすでに基金を造成するための2兆円を2020年度第3次補正予算に計上しているが、この予算案について立憲民主党など野党は国会審議の過程で「緊急性が全く認められない」などと批判していた。それは野党に、国際社会の動きや日本の将来の在り方までを見通した大局観がまったくない証拠でもある。
脱炭素社会の構築は決して容易いものではないが、菅首相が「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、そこに向けて動き出さなければ、挑戦もしないまま日本の未来は暗澹たるものとなったはずだ。
(terracePRESS編集部)