将来世代に必要な「成長戦略」の実現を
ロシアのウクライナ侵略により、国際的な法秩序の維持が国際政治の大きなテーマとなっている。その一方で、未来を見据えて経済成長を実現するための先端技術開発の競争も激化している。そのため、成長戦略をきちっと描くことが政治の役割になる。
日本は戦後、米国や英国など先進国が開発した商品技術を取り入れ、それをマスプロ化、商品化することで工業国家として成長した。それにより欧米へのキャッチアップを実現したわけだが、同時に、日本も、安価なマスプロ化のための技術ではなく、先進各国との競争に対抗するため、本来の技術開発が不可欠となった。
どのような分野で、どのような技術を、どう開発していくのか。それが、日本が今後とも成長していくための戦略となる。子どもや孫の世代の日本が成長し続けることが可能になるよう、今から形を作る必要がある。
では、参院選を巡って各党はどのような政策を成長戦略として掲げているのだろうか。
自民党は量子、AI、バイオ、グリーン、宇宙、海洋、再生医療などを「わが国の勝ち筋となる先端科学技術」と位置づけ、「国家戦略を定めたうえで、大胆な投資を行い、社会実装を進めることで、官民を挙げて科学技術立国を実現し、世界をリードする」などとしている。
そのため、「大学ファンドによる世界と伍する研究大学の実現、地域の中核大学や若手研究者への支援強化により、わが国の研究力を抜本的に強化する」という。
立憲民主党は創薬・バイオ、次世代通信技術、光電融合、量子暗号、AI、デジタル、航空宇宙、超伝導、次世代モビリティなどを成長戦略のための先進技術とし、「国家プロジェクトとして推進する」などとしている。
また自民党は、「起業(スタートアップ)への資金供給、基金化等による研究開発・事業化、人材育成、SBIR(スタートアップ等の研究開発を支援し、その成果を政府が調達する支援制度)や公共調達等の支援を抜本強化する」とした上で「Deep Tech(社会や産業構造を変革しうる革新的技術)等を生み出すスタートアップ・エコシステムを司令塔創設等により抜本強化し、国内スタートアップへの投資額を5年で約10倍(約10兆円)にする」と盛り込んでいる。
さらに自民、立憲両党は脱炭素やカーボンニュートラル、デジタルを成長の起爆剤と位置づけるなど、方向性は似通っている。そういう意味では、立憲民主党も自民党の政策を踏襲しているのだろう。
ただし、問われるのは実行力だ。自民党は政権与党として政策に責任を持っている。すでに政権政党として政府の「クリーンエネルギー戦略」や「新しい資本主義」「デジタル田園都市国家構想」などをはじめとしたさまざまな計画や構想に関与してきた。
当然のことながら自民党と他の野党では政策の蓄積が異なる。野党が同じような政策を掲げても、その公約は〝似て非なるもの〟単なる言葉の羅列でしかない。
(terracePRESS編集部)